実戦練習のワンシーンだった。

　右サイドの望月ヘンリー海輝は自身の背後を攻略してきたフィードに対する反応が遅れたように見えたが、最終的には競り合った相手選手からボールを絡め取っていた。リーチの長い足を生かし、ギリギリの攻防で難を逃れたシーンについて、望月は別の最善策があったことを明かした。

「ギリギリ対応できる許容範囲のボールだったので、対処できたのもラッキーかなという感触です。思考が遅くなったというか、ボールに反応してからの対応になったので、もう少し早く判断できていれば、余裕を持ってボールに対応できたかもしれません」

　身体能力を生かした無理が利く守備は望月自身のストロングポイント。ただそれだけに頼っているようでは、この先が長続きしないことも本人は自覚している。

「僕はまだまだ動きの範囲や量でカバーしていくほうだと思います。例えば（林）幸多郎くんだったら、賢いポジション取りで対応するでしょう。動きの量やスピードで何とかカバーする形は、先ほど（冒頭）のシーンに集約されているので、判断の質をもっと高めていきたいです」

　大卒ルーキーの昨季は「一言で言えば成長の1年」。G大阪との開幕戦で途中出場によるJ1デビューを果たすと、FC東京とのリーグ初先発試合ではプロ初アシストも記録した。また「僕も速いんで」と自負するスピードはスピードスタートとのマッチアップでもまったく引けを取らず。192cmの長身を生かしたエアバトルで相手を制圧できるスケールの大きいSBの台頭に、森保一日本代表監督は望月をA代表に招集した。

　「代表の『だ』の字も想像できなかった」昨年はどこか経歴だけが一人歩きしていた側面は否めない。今季はより実が伴った状況を自ら作り出すためにも、“2年目のジンクス”を吹き飛ばすための覚悟はできている。

「2年目が難しいのはどこの世界でもあることだと思います。1年目は『新人選手にしてはよくやった』という見られ方をしますが、2年目は1年目のベースがある上で厳しい見られ方をされるのは当たり前のことです。今年に関しては成長の加速度を継続させるというよりも、成長の加速度をさらに上げていきたいと思っています。いろいろと改善すべきことはありますが、自分にベクトルを向けて、乗り越えていきたいです」

　まだまだ荒削りな面を踏まえて、黒田剛監督は全体練習の前後でマンツーマンのレクチャー役を買って出ることも少なくない。ディテールは明かされなかったが、指揮官からはチームコンセプトに則した上で思い切ってやってほしいことを伝えられているという。

　クラブと同様にJ1の2年目を戦う新シーズンがホームの広島戦で幕を開ける。昨季の2位と3位がいきなり対戦するビッグマッチに向けて、望月は「開幕戦で勝利をつかみ取る歴史的な1日にしたい」と言葉に力を込める。“満員の野津田”で広島撃破を。その願いを叶えるためにも、望月はこう言って共闘を呼び掛ける。

「ファン・サポーターのみなさんが満員の状況で選手たちを後押しをしてくれたら、間違いなく練習以上のパワーが出ると思います。みんなで勝利の笑顔で終われるように、FC町田ゼルビア一丸で僕たちの後押しをお願いします」

　スタジアム中の声援をエネルギーに変える。“サポーター発信のエンジン”を搭載したサイドプレーヤーが、勝利のために全力を尽くす。


【ホームゲーム情報】
明治安田J1リーグ第1節
2月16日（日）14:00キックオフ
FC町田ゼルビア vs サンフレッチェ広島
町田GIONスタジアム
https://www.zelvia.co.jp/news/news-287558/