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成田の漢、キャリアハイ更新へ。千葉の船山貴之、チームを一番に考えつつ20点の大台も目指す
前節・京都戦(3〇0)で今季19ゴール目をマークし、松本に所属していた14年の自身キャリアハイに並んだ千葉の船山貴之。17日の栃木との今季最終戦でキャリアハイ更新が掛かる。
「個人的には正直、いいですよね。チームの結果が伴わないのはすごく残念ですけど……。結果はチーム(成績)なので。個人スポーツじゃないから。自分が点をとっているのも、みんなが守ったり、パスをくれたり、つぶれたりしてくれて、(最後に)自分がそこにいることが多いだけ。自分がよくても意味のないことかな……。いや、意味なくはないけど、言い方が難しいですね」
長いシーズンをとおしてコンスタントに『19』の得点を積み重ねてきた自負はある。けれどもJ1昇格を目標にしていたチームが13位に沈み、昇格争いに絡めていない現実がもどかしいのだ。
一方で『20』の大台は目前。そこに対する欲はないのか。その問いに対するアンサーはウィットに富む。「いまとなっては、キャリアハイにいきたいですけど、それだけになったら、チームプレーがおろそかになる可能性がある。そこは難しいところ。でも、19か20か(の差)は大きいでしょ。いろんな面で。来年の交渉材料にもなるしね。重要でしょ?(笑)」
そのコメントを受け、「栃木戦ではゴールに集中するのか」という質問にはこう返す。
「いや、そんなことはないですね。(少し前に)プレーオフもないし、なにも懸かってないし、それをちょっと俺がしてたっぽいんですよ。監督にそれを一瞬で悟られて、すぐに呼ばれ、『チームプレーをしてないぞ。外すぞ』、みたいな感じで言われ、俺も確かに『そうだ』と思ったんですよ。それはやっちゃいけないだなって」
そこからフアン・エスナイデル監督とのエピソードに話は広がる。
「すごく言われるのはプレス。『点を取るより、プレスで10回ボールを奪ってくれたほうが俺はうれしいよ』と。俺は『点をとったほうがうれしいよ』と言い返しますけどね(笑)。でも、自分勝手なことばっかりやっていると出られないんで」
そして、話題は再び栃木戦へ。
「連勝よりも、しっかりした試合(内容)の方が大事。(勝負事に)勝ち負けはあるから。ジェフらしいサッカーというか、こうゆうサッカーだぞというのを見せ、結果がついてくれば、来年、いい始まり方ができると思います」
言葉の端々ににじむ“強気”を額面どおり受け取れば、自己中心的な印象を与えるかもしれない。でも実際は真逆。球離れは抜群だし、90分を過ぎてもボールを追い続ける姿を見れば、それは一目瞭然だ。船山貴之とはそんな男である。
文:大林洋平(エルゴラッソ千葉担当)
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J2天下分け目の一戦。東京Vと町田の『東京クラシック』は「ポジショナルプレーvsストーミング」?
東京Vのロティーナ監督が17日に迎える明治安田J2最終節、町田との『東京クラシック』を前に試合の展望を語った。
町田との前回対戦、東京Vはホームで1−4と大敗している。しかし今季、東京Vは前半戦の21試合で5回の敗戦を喫したが、後半戦はここまで4回その相手にいずれも勝ってきた。「勝ち試合からも負け試合からも常に学ぼうとしているが、やはり負け試合から学ぶことのほうが多い」とロティーナ師。「運で勝ったような試合よりは、負けた試合のほうが分析に力が入る」といい、それが結果にも表れているのだろう。
東京Vはロティーナ師の指導の元、グアルディオラ監督のバルセロナやマンチェスター・シティに象徴される『ポジショナル・プレー』で戦っているが、一方の町田はクロップ監督のドルトムントやリバプールに象徴される『ストーミング』の権化のようなチームだ。日ごろは対戦相手について語ることを極端なまでに好まない指揮官だが、「町田はわれわれよりもプレッシングを強くかけ、縦に速いチーム」と評したのは、そのスタイルへの警戒、あるいはリスペクトかもしれない。
マンチェスター・シティとリバプールの今季の対戦を見ると、UEFAチャンピオンズリーグやインターナショナルチャンピオンズカップを含めリバプールが4勝1分と圧倒しているが、「勝敗を分けているのはスタイルの違いだけではない」とロティーナ師は見ている。「たくさんのシステムがあり、たくさんのプレーのやり方がある。常に同じシステムのチーム、やり方のチームが勝つわけではない。それがサッカーの面白いところで、どのやり方も正解はない」という。それよりも師が大事にしているのは「選手の状態」であり、「それ(システムややり方)を良いものにするのも、良くないものにするのも選手たちです」と結んだ。
町田と運命の『東京クラシック』を迎える選手たちの状態について聞かれた指揮官は、「良い状態にあり、勝ちに行く意欲であふれている」と目を細めた。「良いトレーニングができている」というのは、町田のストーミング攻略法をしっかり落とし込めている自信の表れだろうか。そう問いかけてみたところ、「頭の中では毎試合勝ってますよ(笑)」とユーモアたっぷりに切り返す。「でも実際には頭の中で起こらないことが起こったりするものでね。ただ、サポーターの皆さんに勝利をプレゼントするための準備はできています」と力強く語った。
文:芥川和久(エルゴラッソ東京V担当)
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横浜FM・中澤佑二が紅白戦に復帰。「自分はいつでも行けるつもり」
トレーニングに活気があふれた。フルコートで行われた紅白戦の2本目。一方のチームの後方から指示やチームメイトを励ます大きな声が響く。横浜FMのトレーニングに当たり前にあったはずなのに、この3カ月は聞かれなかった声。その主は中澤佑二だ。
中澤は左膝のリハビリのために8月中旬からチームを離れ、別メニューで調整を続けてきた。リハビリは3か月近くに及んだが、先週、対人を伴わないトレーニングメニューに部分合流すると、今週から本格的に合流。14日には10対10+フリーマンのパスゲーム、15日には4対4などをこなすと、この日に10分3本行った紅白戦の1本目こそ先週のようにゲームに入らない若手選手とともに体を動かしたが、迎えた2本目、チアゴ・マルチンスに代わってピッチに入った。
部分合流した先週の段階では「あとは対人プレー。来週はもっと練習が増えると思うから、そこでどれくらいできるか」と話していた中澤。気温こそ20度を下回ったものの強い日差しの中、10分2本の紅白戦でプレーすると、大粒の汗を流し、肩で息をしていた。しかし表情には充実感に満ちている。そして「楽しかった」と笑顔を見せた。
「疲れましたよ。リハビリでかなり走っていたけど、フルコートで11対11だしね。しかもこのチームはポゼッションするから、久しぶりだと展開についていくのは大変。体もそうだけど、目と頭もスピードに慣れていかないといけない」。100%思い通りにプレーできたわけではなかったのかもしれない。ただ、なにより「みんなと一緒にサッカーするのが楽しかった」
状態は「以前よりは良くなっている」が、先週までは外れていた膝のテーピングも全体練習に合流するとなれば両膝に巻かれている。「良くなっている」ことは確かなようだが、数多の激戦を戦い抜いてきた膝から完全に痛みが消えることはない。それでも「自分はいつでも行けるつもり。『行くぞ』と言われた時に最高の状態でいられるように準備する」という姿勢は変わらない。
「あと2試合だから。気合いで頑張ります」。決めるのは監督。ただ、中澤が今、その視界に捕らえているのは24日の鳥栖戦だ。J1・593試合目のピッチに向け、確実に前進している。
文:菊地正典(エルゴラッソ横浜FM担当)
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山口のオナイウ阿道、ブレイクの要因は?今季最終戦で得点王返り咲きなるか
山口のオナイウ阿道は今季22ゴールを挙げ、得点ランクは明治安田J2・2位をキープ。首位を走る大前元紀(大宮)との差は『2』で、最終戦で得点王に返り咲く可能性を残している。
「毎試合で点が取れるように」とストライカーとしての責任感を胸に戦い、霜田正浩監督が前線の選手に課した目標「10ゴール」を早々と第15節(5月20日)に達成。相手からの警戒やマークが厳しい試合でも、チームが14戦勝ちなしで苦しむ時期でも、持てる力を攻守に発揮しながら得点を積み上げてきた。
今季だけで、過去にリーグ戦で挙げた総得点(10ゴール)を大きく上回る得点を獲得。ブレイクの要因の一つは「監督が我慢強く使い続けてくれたこと」。今季はわずか1分を除いて全試合にフル出場する中で試合感覚をつかみ、「以前ほど波なくプレーできるようになった」。そして「周りの選手のおかげでここまで点を取れてきた」と仲間への感謝も忘れない。
いよいよ迎える最終戦に向けては「まずは一つ点を取らないと。自分のスコアを伸ばすこと、チームが勝つために点を取ることが一番じゃないかと思う。みんなでやれる最後の試合。チームとして勝つことを強くプレーに出し、最後を勝って終われるように頑張りたい」と意気込んでいる。
ともに切磋琢磨してきた高木大輔が言うように「得点王になれるチャンスはそう何回もあるわけじゃないし、レノファの名前を大きくさせるためにも大切なこと」。仲間やファン・サポーターの思いに応え、輝かしい記録を残して今季を締めくくりたい。
文・写真:松原純(エルゴラッソ山口担当)
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なるか、最多観客動員記録の更新。松本、徳島戦のチケットが完売
松本は14日、今季最終節・徳島戦のチケットが全席種で完売になったことを発表した。勝てばJ2優勝&J1昇格の決まるチームを後押しすべく、試合当日のサンプロアルウィンに普段以上の大声援が響くことになった。
高まる注目度を表すように、14日のチーム練習には県内の各メディアが集結。また平日にも関わらず約300名のファン、サポーターも駆けつけて、練習に励む選手たちの一挙手一投足を追いかけていた。急きょNHK BS1での全国生中継も決まるなど、熱気は高まる一方だ。
今季最多の観客動員を記録することはもちろん、クラブ史上最多となる19,632名(2016年J2最終節)の更新なるかも期待される一戦。このことについて反町康治監督は、「監督の仕事の一つとして選手のモチベーションを上げることがあるが、これだけ多くのサポーターの皆さんに来ていただけるのであれば、その必要もないのでありがたい。最高の舞台が整っているので、われわれは最高の演技をしないといけない」と話していた。
文:多岐太宿(エルゴラッソ松本担当)
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神戸、リージョ流の″実戦感覚″を養う新たな練習メニューが登場
15日、プレス向けに公開された神戸のトレーニングで、″ポゼッションサッカーの先駆者″と称されるフアン・マヌエル・リージョ監督の哲学を反映した新たなメニューが実施された。
ハーフコートよりもやや広いスペース。8人×2組のフィールドプレーヤーは、攻撃側と守備側に分かれる。4本のポールを立てた四角形のゴールをコートのど真ん中に置き、2人のGKが2面ずつを担当。攻撃側にはフリーマンのアンドレス・イニエスタ、ルーカス・ポドルスキ、ウェリントンが加わった。
この中で、攻撃側には2つのテーマがあった。①ボールをつないでゴールを狙う、②ボールをずっとつなぎ続ける——というもの。各組が交代でこのテーマを実践した。
一つ目は得点のためにボールを動かすが、二つ目について、三原雅俊によれば、「味方につないでいれば、それは守備をしているのと同じこと。相手にボールを渡さないことで、守備をしないで守備をしている」とのコンセプトがあった様子。さらに、守備側はしっかりハメることで「こっちが攻撃している」「攻撃できている」と捉えて取り組んだようだ。
考え方自体はこれまでの練習と同様だが、この練習メニューは選手たちにとって初めての体験。三原は「試合でもその繰り返しだし、面白い」と落とし込まれた意図を強く意識し、実戦感覚を養いながら練習に没頭。2面を一人で守るGKも大変そうだが、吉丸絢梓は「それほど難しくはない」と集中して取り組んだ。
文・写真:小野慶太(エルゴラッソ神戸担当)
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満員の野津田で最終節を。「しびれる空間で戦わせたい。自然と戦ってしまう状況を作っていただけたら」と町田・相馬直樹監督
東京Vとの『東京クラシック』を2日後に控えた町田は11月15日、市内でトレーニングを実施。2日前恒例の紅白戦などを消化し、最終節に向けた準備を着々と進めている。現在のチームは、半年以上ゴールから遠ざかっていたドリアン・バブンスキーが2試合連続でゴールを決めるなど、日替わりヒーローが出現する好循環の渦中にある。チームを率いる相馬直樹監督も「試合前日まで競争が続くのは良いこと」と話し、現在のチームの競争力を歓迎している。この日の紅白戦でも局面では激しい球際の攻防が繰り広げられるなど、最終節のピッチに立ちたいという意欲にあふれた選手たちが必死にアピールする姿は印象的だった。
なお、クラブは現在、最終節に向けて『野津田満員計画』を展開中。トップチームを預かる身を代表して、指揮官はこう言って、野津田への来場を呼びかけている。
「僕が選手たちに無理しか言っていない中、ここまで戦い抜いてくれた選手たちを、満員のスタジアムで、そんなしびれる空間で戦わせたいですし、選手たちが自然と戦ってしまうような状況を、みなさんで作っていただけたらうれしいです。またそういう中でわれわれが78というポイントに到達し、他会場の結果を待つ、そういう状況になれるように、一緒に戦ってください」
満員の野津田で最終節をーー。それが、常に選手たちへのリスペクトを欠かさない指揮官の願いでもある。
文・写真:郡司聡(エルゴラッソ町田担当)
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「オレのために戦うのはやめてくれ」。退任決定した讃岐の北野誠監督が選手たちにそう告げた理由とは?
すでに今季限りの監督退任が発表されている讃岐・北野誠監督。地域リーグ時代からチームの指揮を執り、9年間にも及んだ讃岐での長期政権は今節をもってピリオドを打つこととなる。
選手らはその労をねぎらうように「キタさん(北野監督)がいたからこそ、このチームはJ2の舞台にいる。最後は勝ちで終わらせてあげたい」(高木和正)と恩義ある指揮官の花道を飾る気持ちを表すが、どんなときも親分肌で選手に接してきた北野監督の言葉は最後まで“らしさ”にあふれていた。
「(選手らは)俺のために戦うみたいなことを言ってくれているけど、選手たちにはそんなことは考えないでくれと言った。俺は選手たちに練習場ができるだの、クラブハウスができるだの、嘘をついて連れてきたし、引き止めたりしていた。だから俺のために戦うのはやめてくれと。自分たちとチームのために戦ってくれと言った」
讃岐はJ2昇格当初からチームの練習環境の大幅改善が課題に上がりながらも、遅々としてそれらが改善される兆候は見られず。それでも北野監督はクラブからの改善を約束する言葉を信じ、それを担保に選手を口説いてきた。
しかし、練習環境はJ2昇格5年目の今季になってもまったく改善されず。結果的に北野監督が“嘘をついた”という形になってしまっていたが、指揮官自身も約束を反古にされた側。それでも「それを選手に言ったのは俺だから」と言い訳はしなかった。
他力に頼るところが大きいものの、17日の今季最終戦に勝利すればチームはJ2残留の可能性も残される。
「最後まで現場の責任者としてしっかりやり切りたい」
北野監督は全力で尽くす“チーム”のために、讃岐でのラストマッチに全精力を注いで戦う。
文:松本隆志(エルゴラッソ讃岐担当)
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[本日のエルゴラッソ1面]J1連覇
[特集](川崎F)
■連覇という名の序章[日本代表]
■日本 vs ベネズエラ
無傷の森保ジャパン、南米の新興勢力に挑む[明治安田J2第42節 プレビュー]
■優勝と昇格。“四者四様”運命の最終章