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2試合連続の主将が濃厚のDF吉田麻也。「無理してハセさんみたいに振る舞うことはない」
日本代表DF吉田麻也が、2試合連続で主将を務めチームを勝利に導く。
23日のアウェイ・UAE戦で、負傷によりチームを離脱したMF長谷部誠に代わってキャプテンマークを巻いた吉田。声が枯れるほどの指示でチームを統率し、個人でもタフな守備を繰り返し勝利に貢献した。
28日のタイ戦でも主将を務めることが確実となる中、試合前日の27日に取材に応じた。
「UAE戦の勝利の直後で、気を緩めてしまいがちになる試合。しっかり後ろからチームをリードしたい。相手は引いてくるだろうけど、とにかく早い時間にゴールを挙げて、そこから点を重ねていくことが理想。でもまずは勝ち点3を取ることに集中したい」
一方、UAE戦では日本が速攻をしかける場面が多かったが、この試合では日本が押し込む時間が長くなると予想されるため、反対にタイの速攻に警戒しないといけない。その点についても、吉田は言及する。
「守備の点から言うと、1試合にそんなに多くはないけどピンチが出てくると思う。タイとのアウェイ戦でもGKと1対1のシーンを作り出された。UAE戦でもピンチはあったし、なるべくそういう場面をなくすこと。本当に1試合に、2、3回しかないかもしれない場面でも、突き詰めて向上しないといけない」
また、あらためて主将として戦うことの重責を吉田は感じている。そこには、どうしても偉大な主将・長谷部の幻影もつきまとうが、彼は自分らしさを貫く。
「僕は長谷部誠にはなれない。僕には僕ができるリードの仕方がある。無理してハセさん(長谷部)みたいに振る舞うことはない。自分が正しいと思うようなリーダーシップを発揮したい」
W杯で勝つためのチーム作りと戦いをしていくという理想がある。しかし、同時に厳しいアジア予選を勝ち抜くという現実も目の前には存在する。その関係性を吉田は特に意識している。
「UAE戦は理想的な戦い方(攻撃的)と現実的な戦い方(守備的)のバランスが良いところで重なった。今回はホームでもあるし、より理想に近付ける必要がある。そこで選手のパフォーマンスが試される。現実と理想を常にどう意識し戦うかが大事になってくる」
常にチーム全体のバランスも考える吉田。長谷部とはまた違ったキャプテンシーが、いまの吉田には存在する。
文:西川 結城(エルゴラッソ日本代表担当)
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周囲の喧騒もどこ吹く風。UAE戦のヒーローFW久保裕也は自然体でタイ戦に臨む
日本代表のFW久保裕也が、大きな注目を浴びながらも自然体でタイ戦に臨む。
27日、日本代表は翌日に控えたW杯アジア最終予選・タイ戦に向けた公式練習を行った。ヴァイッド・ハリルホジッチ監督も「かなり重要な一戦」と力を込めて臨んだ23日のアウェイ・UAE戦でチームを勢いづける先制点だけでなく、後半には勝利を手繰り寄せるMF今野泰幸のゴールをアシストした久保。新たなヒーロー誕生として、各メディアでもすでに大きく取り上げられている。タイ戦も右サイドアタッカーで先発することが濃厚で、インパクトのある結果を残して迎えるホーム戦に、否が応でも期待の視線が注がれる。
しかし、そんな雰囲気もどこ吹く風。久保はこの日の取材でも冷静な姿勢を貫いた。
「初ゴールを早く決めたかったので、そういう意味では良かった。でもあまり周囲の期待とかは意識せずに、チームが勝てるように頑張りたい。まだまだコンディションは上がると思うし、監督からも『フィジカルがまだ足りない』と言われた。そこをもっと伸ばしたい」
アルベルト・ザッケローニ元監督が日本を率いていた12年に一度、代表入りした経験がある。当時は10代での抜擢で話題を呼んだが、結局チームに帯同したのみで試合出場には至らなかった。
昨年11月の親善試合・オマーン戦で代表デビューを飾り、続くW杯最終予選・サウジアラビア戦で先発に抜擢。そして先週のUAE戦でゴールとアシストを挙げるシンデレラストーリーを展開した。
しかし、まだ1試合結果を出しただけである。久保本人が、何よりそれを強調する。「結果を出し続けることが大事。1試合だけなら意味がない」と兜の緒を締める。タイ戦はUAE戦とは打って変わり、相手は守備的に引いた状態から戦ってくることが濃厚だ。守備からの素早いカウンターが効いた日本だったが、今回はまた違った方策が必要となる。
「相手は引いてくる。攻撃陣で攻め方のバリエーションを持つ必要がある。特にサイドを起点にして、そこで人数をかけて崩したりできればいい。試合状況を見て、周りの選手としっかりコミュニケーションを取ってやりたい」
前日、DF長友佑都が現在の久保の姿を見て、「自分の若いころを思い出す。ギラギラした感じが好き」と話していた。それについて話が振られると、「それは僕が判断することではない」とニヤリと笑いながら語った。ぼくとつした語り口が印象的なストライカー。タイ戦でも落ち着いた姿勢で結果を出し、日本代表でさらなる存在感を発揮していく。
文:西川 結城(エルゴラッソ日本代表担当)
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札幌戦に向けた練習試合でポジティブに課題を抽出した甲府
代表ウィーク中の甲府は26日に韮崎中央公園で北信越リーグ1部のアルティスタ東御と35分×4本(計5-1)のトレーニングマッチを行った。キックオフは午前11時で、試合前には冷たい雨に一瞬雪が混じることもあった。
リーグ戦のメンバーが先発した1本目は調整と戦術的な確認の意味もあって静かな試合となった。ウイルソンと初めて先発でツートップを組んだドゥドゥがいま一つコンディションが上がらない中でも先制点を決めたが、前線からプレッシャーを掛けてくる東御に押し込まれる時間も多く、ポゼッション率では下回る展開で1-0のまま終えた。
2本目はリーグ戦メンバーとカップ戦メンバーが半々となり、後者のリーグ戦先発の座を狙う意欲がエネルギーとなったが、0-0。カップ戦メンバー主体の3本目も2本目同様にエネルギーのある内容を見せたものの、決定力が不足し、0-0で終了した。
ただ、決定力不足は課題だが、もともと覚悟していた課題であり、現時点では頭を抱えるような問題ではない。最も重要なチーム戦術の表現という意味ではほぼオーガナイズできており、堀米勇輝、土屋征夫、新里亮、曽根田穣、道渕諒平、新加入のボザニッチが積極的なプレーを見せたことでリーグ戦に向けた競争のレベルアップとカップ戦に向けた一定の目途を確認できたことはポジティブだった。
お互いに連係面が厳しくなった4本目は早い時間に同点に追い付かれるも、フラストレーションをボールにぶつけるように無理なロングシュートを打った熊谷駿に吉田達磨監督が厳しい指導を行うと、チームがピリッとし、その後に4ゴール(道渕、熊谷、曽根田、森晃太)。オーガナイズできた4本目ではなかったが、局面では個の力の差を見せた。完全復活に時間がかかっているドゥドゥが左ひざの打撲により、2本目の途中で交代するアクシデント(大事には至らない見込み)があったものの、4月2日の第5節、ホーム・札幌戦に向けて新たな修正点の抽出もでき、ポジティブなトレーニングマッチとなった。
文・写真:松尾潤(エルゴラッソ甲府担当)
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[本日のエルゴラッソ1面]総力戦。ハリルジャパンの真骨頂
[日本代表]
■UAE vs 日本
中東アウェイも何のその。日本の美しい勝利[日本代表]
■日本代表 vs タイ代表
今野、久保に続くヒーローは?[インタビュー]
■The Future vol.2 DF 35 初瀬 亮(ガンバ大阪)
出られるならどのポジションでもやってやる