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加入からわずか10日足らずでの鳥栖デビュー。加藤恒平が感じた手ごたえと課題
新加入のMF加藤恒平が鳥栖でのデビューを飾った。
4日に行われたルヴァンカップ第3節・長崎戦で、鳥栖加入後初出場を初先発で飾った加藤。チームは悔しい逆転負けとなったが、加藤は持ち味であるボール奪取で存在感を放った。「公式戦にスタメンで出たのは去年の11月くらい以来だったので、もう少しキツいかなと思っていたけど、思ったよりは体が動きました。最後のほうは少し疲れたけど、全然悪くはなかった」。そう本人も振り返ったように、長いブランクを経ての先発出場となったが、一定の手ごたえは得た様子だった。
とはいえ、加入してからまだ10日足らずだったこともあり、戦術理解という点ではまだまだ足りない点も多い。マッシモ・フィッカデンティ監督も「チームでどういうサッカーをやっているかを彼も覚えていかないといけないところだと思う。そういう部分を吸収すれば、よりいいものをチームにもたらしてくれる」と本人の状況を理解した上で今後に期待を寄せていた。
「選手一人ひとりの特長をもっと早く理解しないといけないし、あとは監督の戦術のところ。まだ加入して1週間なので、もっとコミュニケーションをとりながら自分の中に浸透させていきたい」
本人も今後の課題について言及していたが、“らしい”プレーも十分に披露していただけに、今後の活躍に期待したい。
文・杉山文宣(エルゴラッソ鳥栖担当)
(写真)昨季は日本代表にも選出された加藤。J1デビューを果たす日も遠くはなさそうだ -
古巣・愛媛戦でゴールを狙う山形の阪野豊史。「出ていった人がやらなきゃいけないこと」
守備を見直し、ここ2試合で複数失点を止めたものの、無得点も2試合続いている山形。その前線で、エース・阪野豊史が虎視眈々とゴールを狙っている。 前々節・東京V戦のスコアレスドローを受け、チームとして攻撃に再び着手した前節・山口戦では、ペナルティーエリア付近でボールを受けてさばきチャンスークするシーンは多く見られたが、阪野本人のシュートはゼロ。「そういう起点になるシーンとかディフェンスもすごい大事だけど、やっぱりペナ(ペナルティーエリア)の中でプレーするのが一番の強み。どんどんペナの中に入って自分のよさを出せたらいいと思う」と、より敵陣に踏み込んでプレーする意欲を示した。
東京V戦では一度ゴールが宣告されたものの、相手抗議によりゴールがとり消されるなど不運な面もあったが、パフォーマンス自体は悪くなく、練習から体もよく動いている。今節の相手・愛媛は古巣であり、勝点6で並ぶ19位と21位の対戦。さらに昨季のJ2第10節で喫した0-2の敗戦した記憶も新しい。阪野は「成長するためだとかレベルアップするために山形にくることを選んだ。愛媛を出て1年以上経ったけど、そのときよりも成長している姿を見せなきゃいけない。それが出ていった人がやらなきゃいけないことだと思う」。
苦しいチームをゴールで蘇生させることはできるか。古巣戦をそのキッカケにしたい。
文:佐藤円(エルゴラッソ山形担当)
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札幌のジェイが戦列復帰。元イングランド代表と元ブラジル代表の共演は実現するか
4日のルヴァンカップ第3節・清水戦で逆転負けを喫した札幌。同大会では3連敗となってしまった。
そんな中、翌5日のトレーニングでは右太もも裏痛でリーグ戦前節を欠場した元イングランド代表FWジェイが全体メニューに合流し、元気な姿を披露。ミニゲームでは積極的にボールに触れ、今週末に行われるJ1第6節・名古屋戦に向けて準備を進めている。
「調子はいい」。練習後に笑顔でそう発した背番号48。負傷明けであり、今節を終えると中3日でのJ1第7節・湘南戦も控えているため先発出場を果たすか否かは流動的だが、「コンディションもいい」と強調。「離脱中もクラブハウス内でいいリハビリができた」と先発入りに向けて意欲を高めている様子だ。
敵地で勝点1を掴んだ前節・鹿島戦はTV観戦。「チャンスをいっぱい作っていたので勝てなかったのが残念だった」とチームメートたちの好パフォーマンスを称えるとともに「勝つチャンスはあったと思う」と話し、自身の得点力を加えることで勝点3を奪いにいく構えだ。
対戦相手にもFWジョーという元ブラジル代表FWが在籍している。ジェイは「プレミアリーグでも活躍していた素晴らしい選手」と強くリスペクトしながらも、直接対決では元イングランド代表の得点力で上回るつもり。リーグは過密日程の厳しい戦いが続いていくが、「しっかり勝ち抜いていきたい」と頼もしく発した。
文・斉藤宏則(エルゴラッソ札幌担当)
(写真)イングランド代表歴のあるジェイ(右)。今節・名古屋戦、元ブラジル代表FWジョーとのストライカー対決は実現するか -
長野県出身の讃岐・麻田将吾、松本と初対戦に意欲を燃やす
長野県出身の麻田将吾が、今節・松本戦に向けて意気込んでいる。
京都U-18出身だが、生まれ育ったのは長野県安曇野市。中学時代にスカウトされ、高校時代に単身で京都へ渡った。少年時代を過ごした安曇野市は松本市と隣り合う位置関係だが、その地域の中でも「松本市に近い場所で、スタジアムには20分くらいの場所でした」。松本の思い出は「テツさん(現在チームメートでもある木島徹也)がプレーしているときに観にいっていました。木島兄弟の印象も強いです」と当時を振り返る。
出場チャンスをつかめばプロ入りしてから初めての松本戦だが、直近で麻田がアルウィンでプレーしたのは「中学3年生のときです。県大会の3位決定戦をやりました。当時はボランチでしたが、そこでゴールを決めました。あのスタジアムでプレーして、個人的にはまだ負けたことがありません」と印象は悪くないそうだ。
しかしながら、プロの公式戦で向かうアルウィンはほかのそれとは事情が異なる。どのチームも松本サポーターの大声援に圧倒され、通常どおりのプレーを見失いがち。初めてのアルウィンならなおさらのことだろう。だが、それも承知の上で「ドアウェイの中でプレーするのは燃えるタイプです。モチベーションも上がります。小さいころから強いチームに向かっていく環境で育ってきたので、その方が自分にとってはやりやすいです」と意欲を燃やしている。
文:柏原敏(エルゴラッソ讃岐担当)
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福岡の森本貴幸がパススピードにこだわる二つの理由
今季開幕直後に「あらためて『止める・蹴る』の技術を意識して、継続的な取り組みの中でそれらを高めていきたい」とコメントした福岡の井原正巳監督。先に同じような意識の取り組みで川崎Fや名古屋において魅力的な攻撃を具現化したのが風間八宏監督だが、その風間監督の下、川崎Fでフィジカルコーチを務めた経験がある菊池忍フィジカルコーチがいまは福岡にいる。菊池コーチの指導で行われるウォーミミングアップやフィジカルトレーニングでは、ボールを使ったメニューが中心となっている。
その取り組みの中で目に留まったのが森本貴幸のパススピードだ。止める・蹴るの基礎トレーニングとなる、いわゆる『パス・アンド・コントロール』と言われるパスとトラップを繰り返すメニューで見せる森本のパススピードが群を抜いている。ボールの受け手がトラップするのに苦労するほどに強いパスをバシッと通していく。受け手のことを考慮していない乱暴なパスにも見えるのだが、これについて森本に聞くと、こんな答えが返ってきた。
「試合で通るパススピードをイメージしてやっているだけです。練習からやっていかないと試合で出すことはできない。あとは、そういうパスを自分にも出してほしい、というアピールの意味もあります」
実戦的な『止める・蹴る』の技術を磨くためには、実戦でしか通用しないスピードでのトレーニングの積み重ねが必要。森本が速いパスを出す一つの理由がそこにある。
そしてもう一つ別の理由がある。森本の特徴は一瞬で抜け出すプレー。そのプレーをゴールやチャンスに結びつけるには、相手DFの目の前、あるいは、オフサイドぎりぎりの“ある1点”でボールを受けられるかどうかがカギになる。点で受けるためには、パスにスピードがなければならない。遅ければ相手にカットされるだけだ。だから出し手となるチームメイトにはそんなパスを求めたい。それが森本言う「アピール」なのだ。
練習を見る機会があれば、ぜひ森本のパススピードに注目してほしい。
文・写真:島田徹(エルゴラッソ福岡担当)
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ケガから復帰し、調子を上げる田所諒。32歳を迎えるプロの姿勢
今季開幕前に負傷したDF田所諒が、先週のトレーニングから復帰している。
調子も上がってきている様子で「自分の中ではいける感覚でいる」とのこと。現在は本職の左SBではなくボランチに配されることも多くなったが、田所は「SBでもできるところは見せないといけない」という思いももちつつ「自分としてはどこで出てもやれる準備はしておかないといけない」と前向きにとり組んできた。
今節・福岡戦当日は、32歳の誕生日でもある。田所は「絡んでいきたい。(そのための)準備をしっかりしたい」と意気込み、こうもつけ加えた。
「もしメンバーに入らなくても、また練習でアピールしていけばいい。(試合は)ずっと続いていくから、一日一日を大事にやっていきたい。(今節)出ようが出まいが、それは忘れずにやっていきたい」
その姿勢が必ず背番号3の活躍につながるはずだ。
文・高澤真輝(エルゴラッソ横浜FC担当)
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C大阪がグループステージ突破へ望みをつないだ済州戦。紡がれた酒本憲幸と柿谷曜一朗との絆
ACL第5節の済州戦を2-1で勝利し、グループステージ突破へ望みをつないだC大阪。この試合ではチーム最古参の酒本憲幸がキャプテンマークを巻いた。「昨季のルヴァン神戸戦(ルヴァンカップ第6節)以来」となる酒本主将に率いられたチームで奮闘を見せたのが、柿谷曜一朗だ。決勝点となった2点目を決めただけではなく、攻守の切り替えでも率先して動き、チームをけん引した。
試合翌日のリカバリー後には、「やっぱり、この選手のために、という気持ちにさせてくれる選手。この人と勝ちたい、という気持ちにさせてくれるし、みんなもそういう気持ちの中で、自然と動きもよくなったんじゃないかな」と試合を振り返った。
昨季のシーズン序盤、酒本に出場機会が訪れなかった時期、「あの人と話していたら、すべてを忘れさせてくれるし、ラクになる。僕にとって、チームの中では一番、大きな存在の人。だからこそまたキレキレになって、早く試合に絡んでほしいし、また一緒にプレーしたい。このまま引退するとかは、絶対に許さへん。あの人は絶対、やる男なんで」と話していた柿谷。
その意味では、酒本にとっても特別な一戦は、それ以上に、彼を慕う柿谷にとっても忘れられない一戦になったことだろう。今季のリーグ戦初勝利を挙げたJ1第5節・湘南戦に続く公式戦連勝で、また一つ、C大阪が勢いづいたことは間違いない。
文:小田尚史(エルゴラッソC大阪担当)
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京都の清水圭介が心に抱く古巣・大分への思い。「すごく鍛えられて、人間的にも成長させてくれた」
7日に行われるJ2第8節・大分戦を心待ちにしている京都の選手がいる。GKの清水圭介だ。清水にとって大分は、プロ入りした07年から7シーズンにわたり在籍していた古巣。「長くいたチームだし、自分を成長させてくれたチーム」に対して、いまも感謝の念を抱いている。
「試合に出られずに苦しんだ時間も多かったけど、『トレーニングから100%でやる。それが今後に生きる』と信じながら毎日を過ごしていました」。そう大分時代を振り返る清水。現在も大分のGKコーチを務める吉坂圭介コーチの指導は特に印象に残っているそうで、「サッカー人生で一番厳しかったGKコーチ。高校の先輩でもあって、お世話にもなっていて、すごく鍛えてくれた。メンタルも、プレーも、人間的にも、成長させてくれました」と回想する。
現在の京都の順位はJ2・20位。開幕からの7試合で無失点のゲームはいまだになく、守護神の清水にとっても不本意なシーズン序盤戦となっている。一方、大分は現在J2・3位と絶好調の状態にある。このタイミングで迎える思い入れの強い古巣との一戦、清水は自身のパフォーマンスで感謝の気持ちを表すつもりだ。
「大分を(失点)ゼロに抑えて勝てば、僕自身も、チームとしてもすごく自信になるし、逆にウチが勢いに乗ることにもなる。もし失点したとしも、何としても勝ち切ることを意識して試合に臨みます」。
文・写真:川瀬太補(エルゴラッソ京都担当)
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大分の後藤優介。かつてのチームメートである京都の清水圭介からゴールを狙う
7日に開催されるJ2第8節・京都戦で、FW後藤優介が、京都ゴールを虎視眈々と狙っている。
15年のJ2第17節で2得点、14年のJ2第27節で1得点と個人的に京都との相性は悪くなさそうだが、いずれの試合も2-2で引き分けており、今度こそは得点とともに勝点3も手にしたいところ。
だが、こじ開けたいゴールの前に立ちはだかる相手守護神は、かつてのチームメートである清水圭介だ。後藤は「あ、そういえばそうでしたね。忘れてました」と余裕をカマしてみせたが、「一度、圭介からPKで得点してみたい」と話した。14年のJ2第11節で、当時は福岡に在籍していた清水と対戦したときには、PKのチャンスを蹴らせてもらえなかった過去を踏まえての願望だ。京都の守備陣もそうそうPKを与えてはくれないと思うが、どんな形でも得点を挙げてもらいたい。
ちなみに、J2第2節で今季から東京Vに移籍した上福元直人と対戦したのに続き、またも師弟対決となる吉坂圭介GKコーチは、「やりづらいわー」と苦笑しながらも、清水が京都の正守護神へと成長したことを喜んでいる。「名前も同じ圭介やし、滝川第二高の後輩やし。まあ頑張ってほしいわ」と、迫力満点のコワモテでエールを送った。
文・写真:ひぐらしひなつ(エルゴラッソ大分担当)
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期限付き移籍で熊本に加入のGK似鳥康太。いま話題の“引っ越し難民”に
野村政孝、内山圭と、二人のGKが負傷により長期離脱することとなった熊本。これを受け、3月19日に岡山から期限付き移籍で加入することが発表されたのはGK似鳥康太。16年には今回同様、期限付き移籍で横浜FCに在籍したが、九州のチームでプレーするのは初めて。しかし「新しい環境に馴染むのは得意」と、すでにチームに溶け込んでいる。
しかし目下の悩みは、ワイドショーなどでも話題となっている”引越し難民”であること。
「業者さんに問い合わせても、今年は特にこの時期どこもいっぱいみたいで、車に積める程度、スーツケース1つとパソコンくらいしか持ってこれていないんです」とのことで、いまだホテル住まい。
住む場所は決まったそうだが、生活用品などの荷物が岡山から届くのは来週になる見通し。そのため、練習がオフの日も落ち着いて出かけるにはいたっておらず、「熊本ならでは」の食事や体験を楽しむのはもう少し先になりそう。
チームについても「みんなが要求し合っていていい雰囲気だし、ここから上を狙っていけたら」と話し、その中で「まずは試合に出て、選手としてピッチ内外で信頼を勝ち取りたい」と意気込む。
恵まれたサイズと落ち着いた風貌で、今季加入したMF池谷友喜、坂本広大、5年目の上村周平らより年下というのは意外だが、ユースからトップ昇格したDF衛藤幹弥、2年目の米原秀亮についでチームでも下から3番目の若さ。アグレッシブに練習に取り組み、「総合的にオリジナルな、目標とされるGK」を目指す。
文・写真:井芹貴志(エルゴラッソ熊本担当)
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