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「伸びシロは一番」。山形の最終ラインで存在感を放つファイター・西村竜馬に“3試合目”はあるか?
5試合勝利がなく、J1参入プレーオフ進出へ向け苦しい戦いが続く山形。その最終ラインで、アフロヘアのファイターが存在感を放ち始めている。新潟から期限付き移籍2年目のDF西村竜馬である。
「僕は気持ちを出すことを周りに伝えることしかできないと思う。空中戦だったり、球際だったりを、僕が強くいけば周りにも伝染する。そこは続けないといけない」
木山隆之監督も「あのポジション、(西村)竜馬は一番ビリけつのスタートだった。でも練習の中で本当に努力するので、アイツ。伸びシロで言えば一番だと思う」と練習での取り組みも含めて評価している。
今季はJ1柏やFC東京を破った天皇杯での活躍が目立つが、リーグ戦での出場はわずか5試合。要因として、山形に加入して以降、個人でもチームでも「いい試合」が2試合続かないことがある。山形デビュー戦となった昨季の第35節・長崎戦は0-0で終えたが、翌節の東京V戦は自らも失点に絡んで1-3の敗戦。今季の第28節・東京V戦に2-1で勝利した直後の第35節・徳島戦では1-5とチームが大敗した。ほかの選手の負傷や出場停止で出番が回ってきた西村に、3試合目のチャンスは巡ってこなかった。
しかし、今回は松本、町田と上位を相手に2試合連続のドロー。前節・町田戦は無失点に抑えている。今度こそ巡ってくるかもしれない3試合目を前に、西村は「周りの選手の助けもあって自分もアピールできているところもあるので、そこの感謝は忘れないようにしつつも、自分ができることはやらないといけないので、いいときが続けられればいいと思います」と謙虚に答えていた。
出場5試合で警告3回という数字もファイターぶりの一端を表しているが、「それを怖がって、球際にいかずに抜かれるのは僕のプライドが許さない。そこは自分を犠牲にしてでもチームのためにならないと」。西村にひるむ様子はない。
文・写真:佐藤円(エルゴラッソ山形担当)
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「まだまだ、ここから!」。横浜FCの野村直輝がアン・ヨンハから学んだ“絶対にあきらめない姿”
激しい球際バトルとなった前節の栃木戦。横浜FCは最後までゴールを射止めることができずスコアレスドローで終えた。J1自動昇格圏の2位以内を目標としている横浜FCにとっては手痛い結果である。それだけに試合終了のホイッスルを聞いた瞬間は、なにか重い空気さえ漂っていた。そんな中、野村直輝はすぐに胸を張り、チームを鼓舞した。
「まだまだ、ここから!」
自動昇格圏まで勝点差6で、2位以内に入る可能性はまだ十分にある。野村は「(前々節の山口戦で)負けたあとの引き分けだから悪くないし、下を向くなということを伝えたかった」。その“絶対にあきらめない姿”は2014年から2016年までともにプレーしたアン・ヨンハ氏から学んだことだという。
2016年、アン・ヨンハ氏は4月に負傷し、リーグ戦1試合のみの出場。これが現役最後のシーズンとなった。「ヨンハさんは、結局膝をケガして最後までプレーすることができなかった。でも一回もあきらめる姿を見せなかった。そういうのを僕たちに教えてくれたし、いま一番自分たちが足りないところ。だから、そういうのを残していってくれた人たちのためにも、自分がつなげていきたい」(野村)。
今季、野村はシーズンをとおして横浜FCの先輩から学んだことをチームに還元してきた。そのスタンスはブレることなく、「最後までやり続けられる雰囲気を行動でも発言でも表現していきたい」。そして「あと6試合どれだけみんなが必死になってできるか」。それが大混戦の昇格争いで求められる部分だ。
文:高澤真輝(エルゴラッソ横浜FC担当)
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珍しい形での船出。鳥栖がJ1残留に向け新たなスタート
鳥栖がJ1残留のため、新たな体制でのスタートを切った。
8日、鳥栖は公式サイトでフィッカデンティ監督に代わり、U-18監督の金明輝がコーチとなり、トップチームの指揮を執ることを発表した。契約を残すフィッカデンティ監督と今後の処遇について協議が続いているため、正式に監督の任を解くことができていない。金明輝コーチも「実質、まだ監督はいらっしゃるので、指揮官ということで、今は話を受けています」と話しているように、珍しい形での新しい船出となった。
「共通言語が一緒であるぶん、しっかりとコミュニケーションをとっていきたい」と話すように積極的な会話でのコミュニケーションが金明輝流となった。練習前のウォーミングアップのやり方が変わったことも影響しているが厳格なフィッカデンティ監督の下では黙々と練習メニューを消化することが多かったが現在は選手たちが積極的に声を出す光景が増えている。また、チームの現状については「失点はリーグで5番目に少ないので、意識、ハードワークは継続していきます。あとは得点がリーグで一番少ないということで、点をとらないと勝ち点はとれないので、攻撃に関わる人数や意識フィニッシュの精度を上げるためのトレーニングは必要」と言及。喫緊の課題である得点力アップへ着手する姿勢を見せた。
練習では金明輝コーチは木谷公亮コーチと頻繁に確認を取る光景が見られた。「僕以上に彼(木谷コーチ)がこのチームを知っているので、聞きながら判断していくかたちは今後も続けていく」とその意図について金明輝コーチは話す。
Jリーグは監督代行を認めていないため、次節の仙台戦までにフィッカデンティ監督との契約について解決できなければ、監督不在の中での試合となる。J1・7年目のシーズンで迎えた最大の窮地、そこで指揮を執ることになった、金明輝コーチの重圧は想像を絶するが「全員の力を借りながら」(金明輝)コーチと一丸となってこの難局を乗り越える。
文・写真:杉山 文宣(エルゴラッソ鳥栖担当)
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負傷離脱から復帰の仙台・矢島慎也、激しい対人形式メニューでも鋭い動きを見せる
11日、仙台は激しい対人形式の練習メニューを実施。長期離脱から復帰したばかりの矢島慎也も、その中で鋭い動きを見せた。
オフ明けの10日には軽めの練習メニューが多かった仙台だが、翌11日は打って変わって負荷の高いメニューが中心。選手を5チームに分け、ミニゲームと対戦型の素早いボール回しを同時進行で合計5セット実施した。渡邉晋監督らコーチングスタッフからは「勝負にこだわれ!」と再三指示が飛び、続く紅白戦でも選手たちの激しい勝負が繰り広げられた。
これらの練習で白熱した攻防を見せた選手の中に、矢島の姿があった。矢島は今季途中に仙台に加入し活躍していたが、8月1日のJ1第19節・名古屋戦(1●2)で負傷交代。左ハムストリングス肉離れで全治約12週間の重傷だった。
10日から再び全体練習でフルメニューをこなした矢島は、11日の対人練習にも参加。自身にとっては初めての大ケガということで「再発しないように、いけるときはいくけれど、無理はし過ぎない」と慎重に調整中だという。
紅白戦の中での矢島は、競り合いの中でも得意のパスを通すなどプレー感覚を取り戻していた。「入ってみた感じでは、プレー自体はよかったし、やっていてやはり楽しかった」。今週は試合がないために、次の公式戦のある20日まで約2週間の準備期間で、矢島は状態を上げる。その相手は、矢島が仙台加入後初先発を果たしたJ1第17節(1○0)と同じ相手・鳥栖である。文・写真:板垣晴朗(エルゴラッソ仙台担当)
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大一番に臨む讃岐。エヴァンゲリオンのヤシマ作戦ならぬマルガメ作戦で一点突破!
讃岐にとって残留をかけた大切なJ2第37節・熊本戦。クラブは『ALL FOR SANUKI DAY』として、チームカラーの青色グッズ持参でB席(ホームサポーター席)に無料招待する企画を実施する。
絶対に勝たなければならない一戦。この最重要ミッションを目前に控え、ホーム讃岐は“ヤシマ作戦”ならぬ『Pikaraスタジアム』での“マルガメ作戦”を画策。帽子、Tシャツ、タオルマフラー、ハンカチ、靴など「青い物ならなんでもOK」とチームカラーの青色グッズ持参や着用でB席を入場無料に。ホームサポーター席を埋め尽くし、数でも応援でも圧倒して勝利を後押しする算段だ。
第26節・山形戦(1△1)で劇的な同点ゴールを挙げた森川裕基を送り出す際に「奇跡を待つより、捨て身の努力」と北野誠監督が葛城ミサト(エヴァンゲリオン)の台詞を引用して後押ししたことが後に話題となったが、マスコットの『さぬぴー』に葛城ミサトが劇中で愛飲していた日本酒の獺祭(だっさい)がプレゼントされるなど水面下でジワリと広がりをみせた。クラブも『ALL FOR SANUKI DAY』を画策する際に、その流れに乗っかった。公式HPの開催予告バナーデザインもインスピレーションを受けた例のものになっている。
第参十七節、マルガメ作戦。エヴァンゲリオンのヤシマ作戦では電力捻出に奮闘したが、四国電力系列のネーミングライツがついた『Pikaraスタジアム』で決行というのも洒落が利いている。一点突破、総力戦でゴールネットを揺らす。
企画詳細|カマタマーレ讃岐公式HP
https://www.kamatamare.jp/news/?id=219&item=INFO文:柏原敏(エルゴラッソ讃岐担当)
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エル・ゴラッソ関西版[10/13(土)発売号]でロングインタビュー掲載予定の岩尾憲。「楽しんで読んでいただければと思います」
徳島の岩尾憲のインタビューが13日(土)発売の『エルゴラッソ』(関西版)に掲載される。首都圏や関西中心地などでは主要駅の売店などで販売されている『エルゴラッソ』だが、徳島県では定期購読者に届く仕組み。定期購読者以外の徳島サポーターにとっては気軽に入手できない事情もあるものの、昨季表紙を飾った号は関西在住の方が大人買いをして、練習場や試合会場で配るなどしていただいたと耳にしている。本当にありがとうございます。
しかしながら、今回のインタビュー掲載号の販売時期は偶然にもアウェイ開催の今節・京都戦(10/13)と重なる。試合当日は発売日にあたるが、売り切れていなければ購入可能。近県ということもあって遠征される方も多いはずだが、機会があればご購入いただければ幸い。
「みなさんご存知だと思いますが、僕は取り繕って話すのは好きではありません。今年起きていることについての本音を言っているつもりです。その辺りを読んだり聞いたりしてもらって、良い意味でも悪い意味でも構わないので、いろいろ感じてもらえれば」(岩尾)。
約6000字、岩尾の言葉をお楽しみあれ。
文:柏原敏(エルゴラッソ徳島担当)
関西の販売箇所一覧
http://www.golazo.jp/wp-content/uploads/2017/09/egkansaitento201708.pdf
※関西版のみ掲載。10/12(金)発売号の全国版には掲載されておりません
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帰ってきたアニキ。福岡の岩下敬輔がゲームを動かす
第28節の水戸戦を最後に負傷欠場が続いていた福岡の岩下敬輔が前節の岡山戦では久しぶりにメンバー入り。その試合では出場機会が巡ってこなったが、厳しい戦いが予想されるリーグ終盤になって頼もしい人が帰ってきたことはチームにとって大きなプラスだ。
岡山戦のサブメンバーに入ったのは、「勝っている状態であれば、相手がパワープレーに出てきたときに投入して試合を締めてもらおうと考えていた」という井原正巳監督の狙いがあってのものだった。
あれから1週間、さらにコンディションが上がった岩下が今節の山口戦、先発でピッチに立ち完全復活を果たす可能性は十分にある。そうなれば11試合ぶりのプレーになるわけだが、そこで何をしたいかとの問いに岩下は次のように答えた。
「山口の攻撃力が高いことは知っているし、勝つためにはそこをしっかりと抑える必要があることも理解している。けれども、僕自身はそこに全神経を注ぐのではなく、山口以上に力があるウチの攻撃陣の力を発揮させることに力を注ぎたいと思っている。試合の残り30分からは自然とゲームは“動く”ものだが、最初からゲームを動かしたい。そればかりにするつもりはないけれども、早いタイミングでどんどん前の選手にボールを入れて、彼らにどんどん勝負をさせたい」
岩下が言う“動かす”ということは、積極的かつ攻撃的な試合運びをするということ。そのためには後ろにいる自分たちが攻撃的なビルドアップをする意識が必要だということだ。
アウェイでの山口戦、帰ってきたアニキこと岩下の“ゲームを動かすプレー”に注目したい。
文:島田徹(エルゴラッソ福岡担当)