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「好きな」湘南の優勝を喜ぶ川崎F・下田北斗。曺貴裁監督の涙を見て、「あれはいつもどおり。いつも泣いているんで(笑)」
国内三大タイトルの一つであるルヴァンカップは、横浜FMとの激闘の末に湘南が大会初優勝を飾った。
28年ぶりのタイトル獲得となった湘南に対して、祝福のメッセージを送ったのは今季湘南から川崎Fへと移籍を果たした下田北斗だ。湘南が準決勝に進んだころから「自分たちは負けてしまって悔しい思いが強いけど、湘南には頑張ってほしい」と語っていた下田は、昨日の試合もしっかりとTV観戦。TVの前で古巣の優勝を喜んだ。
「僕は勝つと思っていました。試合も本当に湘南らしい試合でよかった。個人的にはうれしい気持ちのほうが強いですね。もちろん悔しい気持ちもありますけど、自分としては地元のクラブですし、好きなクラブなので。それに湘南のみんなが頑張っているのは知っていたし、本当に優勝してよかったと思います」
試合後には曺貴裁監督が涙を流す姿がTVに映されていたが「あれはいつもどおりっすね。いつも泣いてるんで(笑)」と一言。湘南の優勝を見ることで気持ちを高めた下田は、次は俺らだと言わんばかりに川崎Fが見据えるリーグ連覇に目を向けていた。
文:林 遼平(エルゴラッソ川崎F担当)
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ルヴァンカップを制覇した“湘南スタイル”。古巣の戦いぶりに神戸FW大槻周平は「あらためて練習の大事さを学んだ」
ルヴァンカップを制覇した湘南に16年まで在籍した神戸FW大槻周平。28日の非公開練習後、その戦いぶりが大きな刺激になったことを語った。
湘南には5年間在籍。“湘南スタイル”の一員として、その哲学を体に染み込ませてきた。決勝当日は神戸の練習日で、TV観戦したのは後半から。「横浜FMがずっと攻めてましたけど、最後までやり切る、走り切る、体を投げ出す、それは練習から常にやっていること。戦うところは練習でやっていることがそのまま出ていたと思う」と見つめた。
そして、「大事なときというのは日頃の練習がそのまま出ると思うし、あらためて僕も日頃の練習の大事さを感じさせられた。学ばせてもらったと思う」と受け止める。
その“湘南スタイル”を習得したいと門を叩く選手もいるが、大槻は逆に、17年に神戸への移籍を決断。「神戸に来て間違いなく技術は上がっている」と成長に手ごたえを得る大槻は、戦うスピリットをベースとした質の向上に取り組む日々だ。
ただ、リーグ戦に視点を移せば神戸と湘南は勝点差わずかに『1』でJ1残留を争うだけに、「そこは譲れない」と語気を強める。フアン・マヌエル・リージョ監督の「戦術も浸透してきた」とし、「練習からすんなり入れるようになっている。これをしっかり結果につなげることが大事ですね」と意気込んでいた。
文:小野慶太(エルゴラッソ神戸担当)
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ルヴァンカップ優勝から一夜。それぞれが振り返った“決戦”
湘南が初優勝を飾ったルヴァンカップ。試合前、曺貴裁監督が強調していたのは「いつもどおり」だった。何か特別なことをするのではなく、周囲の喧噪やいつもとは違う環境の中においても、「ごく普通に過ごす」ことの重要性を説いていた。チャンピオンの歓喜から一夜明けた28日、選手たちに試合までの準備について聞いた。
大野和成はルヴァンカップをとおして調子を上げてきた選手の一人。自身にとっても転機となる大会の決勝とあり、意気込みも人一倍かと思いきや、いたって「普通」に過ごしたようだ。
「前日僕は爆睡ですよ(笑)。前日のパーティで疲れてすぐ寝て、起きたら『あ、もう試合か』という感じで、試合にも普通に入っていきました。それがよかったと思います。
ウォーミングアップでピッチに入ったとき、最初に目に入ったのはマリノスのサポーターでした。旗もたくさん振って『すごいな』と思ったんですけど、振り返ると湘南も負けないくらい多かったんですよ。それを見て『こっちもすげぇ、いけるな』と思って、鳥肌も立ちましたし気持ちも乗りました」
ちなみに大野は、後半の押し込まれる時間も「いつもどおりの『体を張りまくりましょうタイム』に入って、『きました!湘南名物!』と思っていました(笑)」と、焦りどころか楽しみすら感じてプレーしていたという。
一方、「普通」に過ごせなかったのは山根視来。試合前日はあまり眠れないほど緊張していたという。それを解いたのは、監督の言葉と、何より山根自身が持っている仲間を思う気持ちだった。
「曺監督がホテルのミーティングで『優勝したい』じゃなくて『たぶんお前らは優勝するよ』と言ってくれてラクになりました。模造紙にアカデミーの選手やスタッフがコメントを書いてくれて、曺監督は『湘南スタイルで優勝してください』という言葉に感動して、『お前らはそれを植えつけたんだ。そうやって書いてくれた人たちが今日見ている』と。それを聞いて、最初は自分に目を向けていたんですけど、子どもたちがこの舞台で縮こまっている自分を見たら悲しむと思ったし、『なんだよ』と思われてしまう。それで矢印がそっちに向いてラクになって、試合にもうまく入れました」
取材陣から山根の話を聞いた監督は、「いつもどおりやってたけどな」と意外に思いながらも、アカデミーの寄せ書きのエピソードには「狙いどおりだ」としたり顔だった。
文:中村僚(エルゴラッソ湘南担当)