-
茂庭照幸、酒本憲幸のセレッソ大阪ラストマッチは、二人への愛に包まれた素晴らしい空間に
8日、セレッソ大阪舞洲ヤンマー桜グラウンドにて、関西ステップアップリーグ2018セレッソ大阪対関西学生選抜の一戦が行われ、C大阪が3-0で勝利した。
今季限りでの契約満了が発表されている茂庭照幸と酒本憲幸にとっては、この試合が桜のユニフォームを着て戦うラストマッチ。二人そろって先発を果たすと、前半、その二人が立て続けに得点を決めた。35分、自身が獲得したPKを酒本が落ち着いて沈めてC大阪が先制に成功すると、続く42分にはPKを今度は茂庭が決めて、C大阪がリードを2点に広げた。
後半は、前半にキャプテンマークを巻いていた茂庭から腕章を譲り受けた酒本が魅せる。華麗なステップで対面のディフェンスを抜いて、集まった730人の観衆を沸かせると、58分、ハーフェーライン付近から見事なロングスルーパスを福満隆貴に通し、福満がカットインからシュートを決めてC大阪が3点目。試合を決めた。
その後、84分にそろって交代した茂庭と酒本。大きな拍手を浴びながらグラウンドを後にすると、ベンチでは、ピッチでプレーしている選手たちも含めて一斉に彼ら二人を出迎えた。試合後には、選手たちの胴上げが待っていた。背番号にちなみ、茂庭が3回、酒本が20回(!)上げられると、今度は集まったサポーター有志からも胴上げ。コールリーダーからメガホンを渡された茂庭は現役続行の意思を示し、酒本も、「できればサッカーを続けたい」と話し、「幸せな時間でした」とC大阪で過ごした日々への感謝の気持ちを述べた。
ファン、サポーターとの別れを惜しみつつ、多くの報道陣に囲まれた茂庭と酒本は、セレッソでの最後の言葉を残した。
DF 2 茂庭 照幸
「セレッソに来た10年。当時はどん底からのスタートでした。このチームに生かしてもらい、サッカー界での自分の価値を再び上げてもらった。非常に感謝しています。セレッソの長い歴史の中に自分の名前を刻めたことは誇り。一度、タイでプレーしたあと、クマさん(大熊清チーム統括部長)にお願いして、『日本でやるならここしかねぇ』とセレッソに戻してもらった。そういった意味では、大熊さんとJ1に昇格できたことはうれしかったですね。思い出という意味では、昨季のルヴァンカップ決勝が一番、心に残っているかな。セレッソの歴史の中でもトップクラスの、人の心を動かす試合だったと思います。個人としては、セレッソでの全部の試合が大事でした。いつかまた、違う形でセレッソの力になれたらうれしいです。次は監督かコーチだと思うので、しっかりライセンスを取って戻ってきます。ハネ(羽田憲司、鹿島アントラーズコーチ)より先にやりたいな(笑)。
今日はこんなにサポーターが来てくれるとは思わなかったし、最後は胴上げまでしてもらって。『俺、愛されているな』と(笑)試合に関しては、普段と気持ちは変えないように臨もうと思っていました。俺とシャケ(酒本)の特別な試合ではなく、セレッソとしての今季の公式戦、最後の試合ということで臨みました。シーズンに出ずっぱりで、このステップアップリーグには出ないことになっていた選手たち(柿谷曜一朗、丸橋祐介、木本恭生、山村和也)がベンチの裏でね、野次がうるさかったですけど(笑)、ああいうのも、いいなと。俺もシャケも、後輩に支えられてここまで頑張ってこれたと感じました。そして何より、サポーター、ファンの皆さんが大勢来てくれて、めちゃくちゃいい雰囲気を作ってくれた。最高の試合になりました。『どんなに格好悪くてもいいから最後は笑って、勝って終わろう。失点ゼロにもこだわろう』と試合前から言っていたので、よかったです。(PKでの得点というオマケも付いてきたが?)外したほうがよかったのか、迷ったんですけどね(笑)。よかったです。
(今後は)もうちょっとだけサッカー続けたいですね。やれる限りはやる。ただ、やれる環境にないのであれば、そこはもう、引き際だなとも思う。僕が『ボロボロになるまでやりたい』と言うのと、やれる環境があるかないかは別の話なので。ただ、ギリギリまであきらめずに。今日もそこそこ体は動いたし、『やれるかな』という自信はあります。何しろ試合に出たい。試合に出て、ダメならやめる。そういう覚悟です。やるからにはすべてを捧げる気持ち。それでダメならしょうがねぇ、っていう感じです」DF 20 酒本 憲幸
「寒い中、これだけ多くの方に見に来ていただいてうれしかったです。セレッソでの最後の試合ということで、雰囲気は少し普段と違ったけど、最後に勝って終わることだけをみんなで話していたので、失点ゼロで勝って終われてよかったです。(選手からのサプライズや胴上げについて)(セレッソでの)いろんなことを思い返しながら、噛みしめながら、自分でも整理がつかない感情でした。(セレッソでの一番の思い出は?)決められないですけど、悔しい気持ちのほうが覚えていますね。モニさん(茂庭)率いるFC東京に最後に決められた長居での試合とか…(苦笑)。でも、昨季、タイトルを二つ獲れたときは、鳥肌が立つような、しびれるような、今までのうれしさの中でも飛び抜けて嬉しかったですね。『タイトルってホンマに存在するのかな?』と思ったこともあったし(笑)。でも、最後の最後に、昨季、獲れたのでよかったです。
セレッソには感謝の気持ちでいっぱいです。高校を卒業してすぐ入って、サッカー選手としてだけでなく、社会人としても、何もかも、このクラブから学ばせてもらいました。感謝しかないです。サポーターも、ホンマにチームのことを思って応援してくれているなと感じたし、助けられたことはいっぱいありました。成長させてもらったな、という感じですね。(選手からの胴上げについて)初めての経験やったし、『もう一生、ないやろ』というくらいの回数(20回)を上げてもらったので、気持ちよかったです(笑)。(胴上げは)まずモニさんに行って、次、俺に来るとみせかけてないんちゃうかな?とも思ったけど、そこは深読みし過ぎました(苦笑)。
(来季、クラブにいないことが想像つかないが?)いまでも実感はないというか…。今日もラストマッチという感じで臨みたくなかったし。でも、周りが花を添えようとしてくれているのは分かったので、気持ちを込めて試合に臨みました。(3点目の福満選手へのパスも素晴らしかったが?)タカとはよく話もしていたし、『こういうボールが欲しい』という細かいところまで話をしていたので、決めてくれてよかったです。(寂しさもあるが?)まぁでも、こうやってチームは循環していくと思う。僕も若いころに森島さんを始め、セレッソに貢献してくれた先輩方が抜けていく姿も見てきたし、そういう先輩がいて、僕らもいる。もっともっと大きなクラブになっていってほしいですね。(今後は)まだ何も決めていません。いろいろ整理して進みます。来年の話になってから、『まだまだサッカーしたい』という気持ちと、『この気持ちで勝負できるんか』という気持ちと。いろんな人の意見も聞いて、『やめたほうがきれいじゃないか?』とも言われたけど、『引退して後悔するんやったら』という葛藤もある中で、『これや』と思う決断をして、進みたいです。(ゆくゆくは何らかの形でまたセレッソに戻ってくるのでは?)そうですね。それが理想ですね」
誕生日が同じで人柄も最高だった二人。C大阪の歴史において欠かすことのできない大きな存在として、今後もサポーターの記憶に残り続ける。
文・写真:小田尚史(エルゴラッソC大阪担当)