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浦和、天皇杯祝賀会。オリヴェイラ監督は「来年はさらにタフな仕事が待っている」と手綱を締める
浦和は12日、さいたま市内のホテルで全選手、スタッフが参加する「天皇杯優勝祝賀会」を行った。
埼玉県知事やさいたま市長をはじめとする来賓やスポンサー、関係者の前で挨拶したオズワルド・オリヴェイラ監督は、祝賀会の開催を感謝するとともに、「来年はさらにタフな仕事、難しいタスクが待っている。スタッフや選手たちには、来季、集合するときには家に何も残さず、すべて武器をもってきてほしいと伝えた。そうしないと戦い抜けない」と述べた。また、「ファン、サポーターたちの力を必要としています。一緒に戦いましょう。みんなでタイトルを獲りに行きましょう!」と強く訴えた。
指揮官の話は終わらない。そのあと「もう一つあります」とマイクをとると、今季で引退する平川忠亮を呼び寄せる。「平川は最終節後、監督として埼玉スタジアムに戻ってきたいと話した。ただ、私は少なくとも10年ここで働くので…さいたま市長に立候補してください」。会場が笑いに包まれたオリヴェイラ監督らしいスピーチに、平川が「さいたま市長の平川です」と応じる場面もあった。
文・写真:田中直希(エルゴラッソ浦和担当)
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「売り込みがたくさんあった」「方向性はそんなに変えない」。東京V・羽生英之社長が語る新監督招聘の経緯
東京Vは12日、来季の新監督にギャリー・ジョン・ホワイト氏が就任すると発表した。2年間チームを率いたミゲル・アンヘル・ロティーナ氏が9日をもって退任し、後任が注目されていた。
16シーズンは18位と降格危機にあった東京Vは、その翌年にスペインリーグで20年以上のキャリアを持つロティーナ監督を迎え、ポジショナルプレーや5レーン理論といった欧州のスタンダードを習得して2年連続でJ1参入プレーオフ進出を果たした。9日にメディアの取材に応じた羽生英之社長によれば「(ロティーナ氏に)できれば3年目もやってほしいとお願いはしていた」が、資金的な限界と、「一つのチームで長く監督をやるのは慣れてしまうのでよくない」というロティーナ氏の考えもあり、昇格の成否にかかわらず退任することは既定路線となっていた。
「幸い、ロティーナさんで成功して、海外の指導者がわれわれのことを知ってくれた。去年は全然売り込みなんかなかったけど、国内外のいい指導者から売り込みがたくさんあって、そこから3人に絞った。モチベーターとしていい人、若くて野心にあふれていてヴェルディを変えてくれるんじゃないかなという人、ロティーナさんのようにすごく経験があって自分の国のサッカーに精通している人。その中の一人です」
ホワイト氏はイングランド出身の44歳で、イングランドサッカー協会が立ち上げた特別な指導者養成コース出身の俊英。24歳で英領ヴァージン諸島代表チームの監督に就任し、その後バハマ代表、グアム代表などを経て、今年9月からは香港を率いてE-1サッカー選手権本大会出場に導いている。「若くて野心にあふれていてヴェルディを変えてくれるんじゃないかなという人」に該当するだろうか。
スペイン路線を継続すると思われていた東京Vの監督選びだが、羽生社長は「国籍はいまやそんなに関係ない。どういうスタイルを目指しているかが大切」とし、「いまウチがどういうサッカーをやっているかは新しい監督も知っている。同じことをやるわけではないけど、方向性はそんなに変えない。ウチが身につけたポジショナルサッカーに、新しい監督の色を加えていってくれれば」と期待を述べた。
「何よりも、日本でやりたい気持ちが強い人を大切にした」と羽生社長。日本語のツイッターアカウントを持ち、親日家としても知られるホワイト氏に、東京Vは来季の命運を託す。
文:芥川和久(エルゴラッソ東京V担当)
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町田らに朗報。Jリーグクラブライセンス制度におけるスタジアム基準が改定
Jリーグのクラブライセンス事務局は12月12日、東京都内のJFAハウスで記者会見を開き、2019年度の申請から適用されるJリーグクラブライセンス制度におけるスタジアム基準の改定を発表した。
その主な基準の改定とは、スタジアム整備において、条件を満たした場合の猶予期間を設置すること。例えば、例外規定の一つが「スタジアム改修に着工しており、3年以内に完成可能であれば、上位ライセンス取得可能」。また、別の例外規定が「Jリーグが掲げる理想的なスタジアム(※)を整備できるのであれば、5年の猶予を認め、上位ライセンスが取得可能になる」というもの。
なお、上記の規定に基づき、トレーニング施設整備に関しても、3年の猶予期間が設置されている。
今回のスタジアム基準の改定に至った背景には、過去に順位要件を満たしても、スタジアムの基準を充足していないため、上位カテゴリーに昇格できないクラブが存在してきたことが関係している。過去の事例では14年の北九州や18年の町田は、それぞれがJ1昇格プレーオフ出場圏・6位以内に食い込みながらも、ホームスタジアムなどがJ1規格ではなかったため、プレーオフ出場がかなわず。また17年の秋田もJ3制覇を成し遂げたが、スタジアムの問題により、翌年のJ2昇格は実現しなかった。こうした過去の前例が、今回の決定の後押しになったと言っていい。
こうしたスタジアム基準の緩和により、例えば町田のホームスタジアム・町田市立陸上競技場は、2021年2月からJ1規格のスタジアムとして使用可能の予定となっているが、クラブライセンス交付第一審機関(FIB)での審査により、例外規定の適用が受諾されれば、例外規定1の要件を満たしているため、2019年度にJ1ライセンスが取得可能になる。もちろん、来年6月末のクラブライセンス申請までに例外規定を満たす必要性はあるものの、18年にJ2・4位でプレーオフ参戦がかなわなかった町田にとっては、朗報と言ってもいいだろう。
注※Jリーグが掲げる理想的なスタジアム
①アクセス
②屋根
③ビジネスラウンジ・スカイボックス・大容量高速通信整備
④フットボールスタジアム
この4つの要件から定義
文・写真:郡司聡(エルゴラッソ町田担当) -
トライアウトに参加した元讃岐の渡邉大剛。現役続行へ「最後までもがいていきたい」
12月12日、J2の讃岐を契約満了になっていたMF渡邉大剛が、千葉県内でのJPFAトライアウトに参加。7対7のミニゲームや11対11のフルコートでのゲームでは、右サイドMFとして出場した。11対11のゲームでは最終ラインの背後へ抜け出した平石直人へ浮き球のパスを通し、終了間際には大石治寿とのワンツーからゴール前へグラウンダーのクロスを供給するなど、チームの攻撃を循環させる持ち味を十分に発揮した。
J2のシーズン終了後は、讃岐の若手選手とともにコンディション調整に励み、トライアウトでベストなパフォーマンスを発揮できるように準備してきたという。「ケガなく終えられたし、楽しくやれたので、いまは清々しい気持ちでいる」と渡邉。自身の希望カテゴリーはJ2以上で、渡邉本人は「プレーできるチームがなければ続けられないけど、まだまだ現役でやれると思う限りは、最後までもがいていきたい」と話している。
Jリーグ通算で397試合に出場した“経験値”は、この日の参加者の中でもトップクラスの実績。「ゲームの流れを読む力や、ベテランと若手を融合させる橋渡し役になることとか、チームに還元できることはあると思う」とは本人の弁である。そうしたベテランならでの“経験値”は、必ずやチームの助けとなるに違いない。
文・写真:郡司聡(エルゴラッソ町田担当)
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J1とJ2の差、それは…。退任が発表された東京V・ロティーナ監督が語った答えとは
8日に行われたJ1参入プレーオフ決定戦で磐田に敗れ、東京VのJ1昇格を果たせなかったロティーナ監督。9日朝には退任が公式にリリースされ、クラブハウスには大勢のサポーターが集まり別れを惜しんだ。チームの解団式を済ませ、サポーターの前に立ったロティーナ師は、「この2年間、ありがとう」と言いかけ、声を詰まらせて目頭を押さえた。そして「私の願いは、同じ姿勢でチームを、クラブをサポートしていってほしい。この2年で近づくことができたところに届くために。偉大なクラブというのは、選手だけでなくてサポーターが作るものです。その点ではあなた方はとても偉大です」と語り、万雷のロティーナ・コールに送られクラブハウスを後にした。
その場面の前に、メディアに対し最後の囲み取材に応じた。ラ・リーガで豊富なキャリアを誇り、来日してからも常にヨーロッパの先端に目を配り続けたロティーナ師だが、一方でメディアに戦術を語ることは極端なまでに嫌った。磐田戦終了後の会見でも、「最も感じたJ1との差は何だったか?」との質問に対し、「カテゴリーに違いがあることは差があるということ。よりレベルの高い選手たちが1部に行く」と具体的には触れなかった。
しかしこの智将が、天皇杯の2回戦や3回戦といった段階ではない、プレーオフという生きるか死ぬかの舞台で必死になったJ1チームを相手に何を感じたのか。それを語ってもらえなければ日本サッカー界の損失だろう。そこで再びロティーナ師に聞いた。「試合直後に答えていただくのは難しかったかもしれないが、あらためてすべてのJ2チームを代表して聞きます。磐田戦で感じたJ1との差は何でしたか?」と。師、答えていわく——。
「カテゴリーが上がるにつれ、サッカーにおいて重要なことが明らかになる。それはスペースと時間だ。プレーのためのスペースと、それを決断して実行するための時間。1部でプレーできる選手は狭いスペースで短い時間でもプレーできる。まるで大きなスペースで長い時間があるようにプレーできる。だからこそ1部でプレーできる」
その差を埋めることはできなかったが、より多くのスペースと時間を得るためにロティーナ師が右腕のイヴァン・パランココーチとともに落とし込んできたポジショナル・プレーは、東京Vにとって貴重な財産だ。それをベースに来季から新監督の下でさらなる成長を遂げ、J1に昇格すること。師もそう願っている。
文・写真:芥川和久(エルゴラッソ東京V担当)