「やっぱり出たかったですね」
昨季まではホームスタジアムとしてプレーしていた埼玉スタジアム2002のピッチが目の前にある。柴戸海が冒頭の感情を抱くのも無理はない。
期限付き移籍元である浦和のチームメートと、今季期限付き移籍で所属する町田の選手たちが、丁々発止の駆け引きをしながら90分を戦い抜き、現所属先に軍配は上がった。ピッチに立ちたい気持ちを押さえながら、現地で見た90分を柴戸はこう振り返る。
「今までは心強い存在でしたが、実際に相手にすれば迫力がありましたし、レッズサポーターが仕掛けるプレッシャーはすごかったです。ただ町田としては難しいゲームになることは分かっていましたし、その中で出場した選手たちがチームのコンセプトを実践しながら難しい時間を耐えて、得点も取り、球際と切り替えのところで違いを見せることができたと思います。素晴らしいゲームでした」
両チームの選手たちから刺激を受けた柴戸は、ホームの新潟戦でピッチに戻ってくる。相手の新潟はリーグ随一のボール保持志向のチーム。中盤の底でボールをハントする役割を得意とする柴戸にとっては、腕の鳴る舞台だ。パスワークで前進してくる相手を潰し、奪ったボールをスピーディーなカウンターにつなげる。持ち前のボール奪取能力だけではなく、ボール奪取直後の縦への配球は、“黒田ゼルビア”で習得したスキルだ。「ボールを持たれる中でも、ボールを奪った後の速さは随所に出せると思う」と柴戸も自信をのぞかせる。
過去のキャリアを振り返ると、柴戸はチームを指揮する監督が代わった中でも、自身の武器を発揮し、その上でプラスαのチームコンセプトを実践することに長けた一面も持つ。例えば浦和のリカルド・ロドリゲス体制では、最終ラインからボールを引き出し、ボランチの位置から相手の急所を突いて前進していくプレーも習得。また町田ではボール奪取・回収直後のスピーディーな縦への配球を身につけた。チームで新たに求められることを実践する力の源は、どこからきているのだろうか。
「まず試合に出るために監督の求めていることを理解することから始まります。その中で大事にしていることを落とし込んで練習から意識してやっていくことを重要視しています。実際にできているように見えても、中では試行錯誤というか、迷いながらやることもありますが、一つひとつ解決することで自信は出てきます。決して簡単ではないですけど、簡単にやって見えるときが一番調子がいい証拠なので、簡単に見せることができればとは思っています」
新潟のパスワークを町田がプレスで寸断し、奪ったボールを相手陣地深くまで運ぶためのお膳立てをする。最後を仕留める力はアタッカー陣に託すことになるが、フィニッシュワークまでのプロセスは、柴戸や仙頭啓矢ら、ボランチが担う。リーグ4連勝を目指す新潟戦に向けて、柴戸はこう言った。
「今は首位ですが、勝っているときこそスキを作ってはいけません。僕たちは落ちるときはあっと言う間に落ちるという危機感があるからこそ勝てていると思います。あまり先のことを考え過ぎるのは良くないですが、チームが勝つためにできることは全部やっていきたいです」
試合に飢えた“ボールハンター”が、新潟戦勝利のキーマンに名乗りを挙げた。
【ゼルビアキュン祭り2024・ホームゲーム情報】
明治安田J1リーグ第17節
6月1日(土)15:00キックオフ
FC町田ゼルビア vs アルビレックス新潟
町田GIONスタジアム
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