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[書評]読むサッカーvol.45 『凡事徹底――九州の小さな町の公立高校からJリーガーが生まれ続ける理由』
大津高を日本屈指の名門校に育て上げた智将の“人作り”
古くは06年のドイツW杯に出場したGK土肥洋一(U-18日本代表GKコーチ)やFW巻誠一郎(熊本)。最近ではDF谷口彰吾(川崎F)、日本代表にも名を連ねるDF植田直通(鹿島)。そんな彼らを輩出した公立高校が阿蘇山の麓にある。熊本県立大津高校。数多くのJリーガーを輩出し、高校年代最高峰の高円宮杯U-18プレミアリーグにも参戦する高校サッカー界屈指の名門校だ。しかし、そんな大津高も30年前まではどこにでもある高校の一つに過ぎなかった。93年から指導を行い、イチから鍛え上げた男の存在がチームを全国で戦える集団へと生まれ変わらせたのだ。その名は平岡和徳。現在は宇城市教育長を務める傍ら、いまなお大津高サッカー部総監督として日々、“人作り”に勤しむ智将だ。本書は教育者・平岡和徳がいかにしてチームを鍛え、Jリーガーを育て上げたのかを詳細に記した一冊である。その根底にはサッカーを通じた人間教育があった。『凡事徹底』。本書のタイトルであり、平岡和徳の教育論を語る上で欠かすことができない言葉だ。意味を辞書で調べてみると、こう記してある。
「なんでもないような当たり前のことを徹底的に行うこと、または、当たり前のことを極めて、他人の追随を許さないことなどを意味する」
ただ、これを15歳から18歳の子供たちに落とし込むことは一筋縄でいかない。希望に満ちあふれた若者を動かすには、心をくすぐるワードや行動が必要である。そのために何を行い、どういう言葉を選手たちに掛けたのか。どのようなチームマネジメントを行い、なぜそのような指導理論が築き上げられたのか。本書には平岡和徳の“人作り”のすべてが描かれており、原点がどこにあるかまで記されている。
サッカー部の指導者と言うよりも、教育者である平岡和徳。本書には読んでいると思わず納得してしまう言動が多々ある。間違いなく、人を育てるヒントになるだろう。サッカーファンはもちろん、人を育てるという立場にいる方々にもぜひ呼んでもらいたい一冊である。最後の1ページを読み終えたとき、今までにない読了感を味わえるはずだ。
文:松尾祐希著者:井芹 貴志(いせり・たかし)
発行:8月30日/出版社:内外出版社/価格:1,400円(本体価格)/ページ:224P -
JAPANサッカーカレッジとの練習試合で、端山豪が猛アピール。「応援してくれる人たちが少しでも報われるようなプレーをしたい」
7日、新潟は聖籠町のクラブハウスでJAPANサッカーカレッジと練習試合(45分×2本)を行い、6-2で勝利した。
この日はDF大野和成、FW河田篤秀、MFロメロ・フランク、FWドウグラス・タンキ、MF端山豪のゴールに続き、右ももの違和感から約1カ月ぶりに実戦復帰したDF矢野貴章がCKから得点。訪れた約350人のサポーターに、多くのゴールシーンと勝利をプレゼントした。
一際、観衆を沸かせたのは端山のゴールだ。87分、ロメロ・フランクが相手の仕掛けを止め、そのこぼれ球を収めたMF原輝綺がすかさず端山へパス。ドリブルで持ち上がり、ミドルレンジから豪快に放った右足シュートは、「イメージどおり」にネットに突き刺さった。
端山は64分から[4-2-3-1]のトップ下で途中出場すると、背後へ抜け出す動きや、切り返しでDFをかわしてクロスを上げ、攻撃を活性化。「(スコアが)2-2だったので、積極的にいこうと思った。そこから4点入っているので、試合の流れを変えられたという意味では良かった」。今季のJ1第20節・横浜FM以降、遠ざかっているリーグ戦出場へのアピールにもなった。
チームはJ1残留に向け、正念場を迎えている。
「限られた試合数で状況は厳しいが、ファンや応援してくれる人たちが少しでも報われるようなプレーをしたい。少ないチャンスでも決められるようにしたい」
特別指定選手だった15年には、2nd第14節・松本戦で、J1残留を大きく引き寄せたミドルシュートも決めている端山。出番が来たら、チームを救うシュートを狙うつもりだ。
文・写真:野本桂子(エルゴラッソ新潟担当)