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残り2試合、柏がシーズン2度目の監督交代。瀧川龍一郎社長「少しでも(残留の)可能性を高めるべきだと考えて」
J1残留争いを強いられている柏が10日、シーズン2度目の監督交代を決断した。5月に就任した加藤望監督を解任し、岩瀬健コーチが昇格することを発表した。
10日の練習後には瀧川龍一郎社長が取材に対応。以下、主な質疑応答となる。
――監督交代の理由は?
「5月途中から加藤望監督にチームの立て直しをお願いしました。アカデミー路線の+αを含めて成績面の立て直しをお願いしたわけですが、連勝など、継続の面でなかなか難しかったところがありました。もちろん攻撃面とかいい面もあったし、チームの雰囲気も悪くはなかったので、このまま期待したところをやって頂けると思っていました。
しかしながら(J1第30節・)名古屋戦以降の大一番3連敗という結果もあります。特に(第31節・)川崎F戦です。それ以降、(監督の采配に)迷い的なところも見られましたし、チームの雰囲気も状況も下降している実態がありますので、監督を代えるべきだと決断に至った次第です」
――残り2試合。このタイミングであえて監督を代えた1番の理由は?
「時期の問題に関しては早いからやる、遅いからやらないということではないと思っています。そのタイミング、タイミングでどう判断すべきかとずっと思っています。
1番はやっぱりチームの状況、雰囲気です。まだ(残留の)可能性を残した試合も残っていますので、そこで勝つためにどうするかを考えて、川崎F戦以降のチームの雰囲気や状況を考えると代えるべきだと、そうすることで少しでも(残留の)可能性を高めるべきだと考えて代えることに決めました」
――加藤望監督の反応は?
「彼自身はもともとやり続ける覚悟をもってやっています。その意味では、結果に対しては本当に申し訳ないと言ってくれていますし、志半ばという思いは当然あると思います」
――2試合を残し、監督交代がシーズン2度目ということについてはどう捉えているのか。
「当然そういう前提でやっているわけではないので、いまの状態に関しては非常にいろいろな思いをもっています。とにもかくにも、いまできることをすべてやって、とにかく頑張るしかないというのがいまの心境です」
――監督交代の決断のタイミングはいまがベストだという判断?
「それは結果でしか分からないので、その時々でいま代えるべきか否か、代えた代えないについては、その時々でそれがベストだと思って判断してきたつもりです。結果として、ベストではなかったということは当然あると思っていますし、そのときにはどうすべきだったかという反省は当然必要だと思っています。
ただ、各々のタイミングでは、そのときにできる状況などを総合的に判断して、監督(交代)の話で言えば『代えるか代えないか』ということについて、自分たちなりにベストの判断をしてきた認識であります」
――「この判断は強化部の話を聞いた上での判断」という話がありましたが、そこには下平隆宏強化ダイレクターの考えもありましたか。
「なくはないですけど、そこまでウエイトとしてはそこまで大きくはありません」
――下平隆宏前々監督が解任されたあと、なぜ強化部のダイレクターに就任するのか疑問視する声があったのは事実だと思いますが、そこに対しての考えは?
「もともとアカデミーから一貫してということを軸にしてやってきています。そのへんの考え方やポリシーが分かる人間には、強化や現場の軸になるところにいて頂きたいというのは当然根幹にあります。
その中で下平前々監督の解任の時点では、もともとそういう想定はありませんので、一気に彼がいなくなることに対する、その軸の問題がありますので、クラブに何らかの形で彼の知見は必要だと判断して、ああいう形で残しました。実際、下平に一任で全権を任せてやらせていた形になっていたわけではありませんので、当然、彼の意見やアカデミーが軸の根幹を揺らがさないよう意見はいろいろと聞いたりしていましたが、その部分では、確かに不明瞭なところがあったことは否めないかなと思っています」――クラブの今後の方針として、吉田達磨元監督、下平監督とアカデミー路線できており、加藤監督はそこへの+αだったと思います。結果的に違った方向のサッカーに舵を切った形になりましたが、あらためてレイソルとしてはどのような方向性のビジョンを描いているのでしょうか。
「育成から一貫してクラブを作っていく。ここは絶対にブラすことはありません。
ただ、やっているサッカーとしては、アカデミーでやっていたことだけでは、周りも激変して力をつけているわけで、それだけではやっていけないとここ数年で見えてきて、難しいなと私も最近すごく痛感しています。小学生時代から仕込んでいるので入り口の部分から直さないといけない部分もあると思っていますし、そういうことを考えると、トップチームでいろいろな+αをつけていかないといけません。今までアカデミーでやってきたことを否定したり捨てるつもりはまるでないですけど、そこに+αで何か付け加えて変化をさせていかないと生き残っていけないという危機感をもっています。そういうところを加藤望(前監督)に求めていたわけですね。
ただ、この数年の試行錯誤はそれですけど、どっちかに振り切ってしまうと齟齬が出ることもすごく反省をしていて、軸をブラさないように試行錯誤を繰り返して、時間をかけて作り上げていかないといけないとあらためて痛感しています。そういう面から拙速に映ってしまう部分もあるのですが、そこは自問自答しながらやっています」
――基本的にはアカデミーが土台にあってそこに積み上げていくイメージか?
「そこはまったく変えようとは思っていません。血を全部入れ替えて、毎年、軸の違うサッカーを求めようという気はありません」
――残り2試合で監督を交代する際に、次を任せられるのは岩瀬健監督しかいなかった?
「いまの現状やどういう経緯でこうなっているかを含めて状況を理解していて任せられるのは岩瀬ということですね」
――シーズン中に監督が2度交代することは異例であり、たとえ残り2試合で残留をつかみとれたとしても、それですべてよしと丸く収まらないと思うが、社長をはじめとするフロント陣や強化部に問われる責任は?
「本当にいまのこの状態、窮状に落ち込んでしまっていることについてはファン・サポーターをはじめ、スポンサーからあらゆる支えてくれている人たちに対して本当に申し訳なく思っています。責任論の話はシーズンが終わってからいろいろと考えないといけないと思っていますが、いまはとにかく(残留の)可能性が残って、やれることがあるので、そこに全力を尽くすことがわれわれのやるべきことだと認識しています」
――シーズン最初には『柏から世界へ』と謳い、ACLを戦いながらここまできてしまったことについては、あらためてどう思いますか?
「自分自身としても期待の大きいシーズンでしたし、監督に2回代えないといけない窮状になっていることは本当に申し訳なく思っています。繰り返しになりますが、その中でもできることを、とにかくクラブ一丸となってやるということしか思っていません」
代表ウィークでの中断期間を挟み、柏は岩瀬健新監督とともに残り2試合で大逆転での残留を目指すこととなる。
文・須賀大輔(エルゴラッソ柏担当)
(写真)残り2試合の指揮を執ることになった岩瀬健コーチ -
チームをけん引する松本・田中隼磨。眼前の栃木戦に向けて決意
リーグ戦も残り2試合となった松本は、今節に栃木とアウェイで激突する。J1昇格争いが大詰めを迎え重圧もかかる中、「気持ちが昂るのは当たり前だと思う。モチベーションはいい意味で高まっている」と話すのは、最年長選手としてチームをけん引する田中隼磨だ。
前節・東京V戦では「相手のストロングな部分を消すのが自分たちのやり方だが、それをピッチ上でうまく表現できた」と振り返るように、対面の泉澤仁のよさを消す見事なディフェンスを披露。無失点勝利に大きく貢献した。前々節・大分戦で敗れたダメージは大きかったが、ほかの上位チームが足踏みしたこともあってJ1自動昇格圏を維持しており、「何か流れがあると思う」と言葉にも力がこもる。
10日に大分と横浜Cが勝利したことで、今節・栃木戦は何としても勝ち点3の欲しい一戦となる。ここまではうまく運を味方につけた側面もあったが、いまは自力でJ2優勝を果たせるポジションにつけているだけに、残り2試合の戦いぶりに注目が集まる。「いい流れを確かなものにするためにも栃木戦では勝利したい」と、まずは眼前の栃木戦に向けての決意を示した。
文:多岐太宿(エルゴラッソ松本担当)
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栃木の服部康平がホーム最終戦で誓う恩返し。「退任する横山監督の花道を飾りたい」
「自分は栃木で横山監督に見いだしてもらった一人。感謝しかないので退任は残念です」
栃木の服部康平は7日に発表された横山雄次監督の退任を惜しむ一人だ。J3の相模原でプレーしていた16年、栃木戦での活躍が指揮官の目に留まり迎え入れられた。
「練習を非常にハードにやる監督で、必死についていったらいつの間にか自分の力になっていた」
今季は開幕季の緊急事態に伴って最終ラインのレギュラーに抜擢され、右腕にはキャプテンマークを託されるようになった。
「横山監督はそれまでの自分の考えの甘さを排除するために、プロとして必要な厳しさを教えてくれた人です。本当に感謝しかありません」
成長を実感できた今季も残りは2試合。次節はホームに首位松本山雅を迎える大一番となる。
栃木にとっては今季のホーム最終戦。そして横山雄次監督の退任が発表された直後の大事な試合だ。ともにセットプレーに勝機を見いだそうとする者同士の戦いの中、服部は間違いなくキーマンの一人になる。
「相手は優勝や昇格がかかる可能性のある試合。それをウチのホームでやらせるわけにはいかないんです。必ず勝って、自分も結果を出して、横山監督の花道を飾りたいと思っています」
文・写真:鈴木康浩(エルゴラッソ栃木担当)