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確かな存在感を示してきた大卒ルーキーMF重廣卓也。今季ラスト1へ「自分のプレーを表現して、点をとりたい」
すでにJ1昇格もJ3降格も無関係となっている京都は、17日のJ2第42節・讃岐戦で18年の公式戦全日程を終えることになる。2月の開幕からおよそ9カ月にわたって続いた今季の戦いを「あっちゅう間やった」と振り返るのが、阪南大から今季加入したルーキーのMF重廣卓也だ。
「みんな『長かった』って言うてますけど、あっちゅう間やった(笑)。『もう終わるん?』という感じです」
ここまでJ2リーグ戦31試合に出場して3ゴール。プロ1年目のボランチとしては立派な数字を残してきたが、「全然、試合にも出てへんし」と本人は物足りなさを感じている様子。「疲れもまったくない」そうで、オフに入ってもすぐに自主トレにとりかかる予定を組んでいるという。
5日の練習でチームメートと衝突し、脳震とうを起こした重廣は、ホーム最終戦だった前節・千葉戦ではメンバーに入れなかった。だが、今週からは対人プレーも解禁され、練習場で元気な姿を見せている。「まだちょっとだけ怖さはあります。でも、もう1週間以上経っているし、試合に絡むことがあれば気にせずに突っ込もうと思っています」と話すように、最終節への出場は問題なさそうだ。
「自分はボランチだけど、型にハマりたくない。もし讃岐戦に出られるなら、自分のプレーを表現して、点をとりたいです」
豊富な運動量を武器に攻守に存在感を示してきたルーキーが、どんなプレーでプロ1年目を締めくくるのか、注目しておきたい。
文・川瀬太補(エルゴラッソ京都担当)
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栃木・寺田紳一が復帰。大黒将志とのホットラインも健在
寺田紳一がピッチに戻ってきた。
今年2月の練習中に「ブチッと切れる音がしたのでびっくりして後ろを振り返っても何も起きていない」と思いきやその実、自分のアキレス腱が切れていたという自身初の衝撃の出来事を振り返った寺田紳一。その後は地道なリハビリを繰り返すなかで、ついに前節、78分から今季初出場を果たした。
「俺だけを見ておけ」
ピッチに入るやいなやG大阪や横浜FCでホットラインを構築した大黒将志からそう要求され、パサーの血が騒ぐように次々とラストパスを供給、そのうちの1本を通して大黒の決定的なシュートにつなげてみせた。
「もともともっているクオリティや経験が違うし、前節も見ていてストレスがなかった」と手放しで称賛したのは横山雄次監督だ。寺田がアキレス腱断裂で長期離脱したことについて「今季の大きな誤算だった」と振り返る指揮官は、ここにきてカムバックした寺田に「戻ってきてくれて本当にうれしい」と最終戦に向けて期待を寄せている。
寺田自身は「練習試合では90分出ているけど、公式戦は前節の12分間だけ。練習試合と公式戦は別。長い時間はやってみないとわからない」と口にするが、前節後には「最後の試合でチャンスをもらえるのならば、楽しんでサッカーをやって、それで勝てれば最高」と話しており、今週もハードなトレーニングをこなしながら試合出場に向けてしっかりとアピール、心身ともに充実している様子だ。
「千葉はハイライン。自分からオグリさん目掛けたボールでゴールを奪えるんじゃないかと思っている」
寺田は最終節の千葉戦をそう見据える。数多のチャンスを作ってきた大黒とのホットラインは最終節でも千葉ゴールに襲い掛かるか。
文・写真:鈴木康浩(エルゴラッソ栃木担当)
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前節メンバー外となった長崎の前田悠佑。転んでも立ち上がる男のピュアな原動力
前節、長崎のメンバー表からある選手の名前が消えた。
ある選手とは前田悠佑のこと。高木琢也監督就任時からチームに在籍する髙杉亮太と前田に対する指揮官の信頼は厚く、「最終的には髙杉と前田」と言われるほどシーズン終盤になれば、この二人がピッチに立っているのが長崎にとっては当たり前の光景だった。
しかし、前節、前田はメンバー入りできなかった。これは実に第4節・札幌戦以来、3度目のことだった。これには前田も「かなり悔しかった」と振り返った。しかし、その裏にあるのは個人の思いではない。「去年、昇格して試合に出る、出ないは関係なしにしてもチームに何とか貢献したかった。いろいろな貢献の仕方があると思いますけど、何とかベンチに入って、サポートできればなと思っていた。大事な試合でメンバーから外れたのでどうやって貢献しようかなと思いましたけど、なかなかできなかった」。チームへの貢献を第一に考えて行動してきたが、メンバー外になってそれをうまく実行することができなかった。そこからくる悔しさが前田にはあったようだ。
「うまくなりたい」がモットーの前田だが、J1という日本最高峰の舞台はその思いをさらに強くさせている。「試合の絡み方によっては凹むこともかなりありますけど、それは初めての経験だし、仕方ないこと。それをまたバネにしたほうが絶対にうまくなれる。これをより続けたいという思いです」。凹まされたことを思い返しながら苦笑いを浮かべてもすぐにサッカー少年のようにうまくなりたいという純粋な思いを口にする。だからこそ、J1に何としても残留したいという気持ちは強い。
34歳を迎えるシーズンで初めて経験したJ1の舞台。可能性がある限り、前田は残留をあきらめない。
文:杉山文宣(エルゴラッソ長崎担当)
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「落としていい試合ではない」。“覚悟の移籍”で千葉にやってきた下平匠が臨む最終戦
「ジェフをJ1に上げるために来たので、それができなかったのが悔しいです。(いまの心境の中で)そこが一番大きいですね」
8月に横浜FMから期限付き移籍で千葉に加入したDF下平匠。加入直後の第28節・町田戦からの14試合のうち13試合で先発出場を続けたが、浮上の起爆剤となるまでには至らなかったことを悔やむ。
一方で個人の内容に目を向ければ、正確無比のキックを随所に見せ、2ゴール2アシスト。前節・京都戦(3〇0)でも貴重な追加点を奪い、2連勝に貢献した。「マリノスでは前半戦、ほとんど試合に出る機会がなかったので、ジェフに来て使ってもらっているのはありがたいです」と話すが、「ただ…」と続ける。
「自分のできることをしっかりやって、それがチームのプラスになればいいと思っていた。それはジェフに限らず、どのチームにいるときもやっていますが、結果につながらなかったのが残念です」
自身初となるJ2でのプレーを選択した“覚悟の移籍”だった。G大阪、大宮、横浜FMとJ1でプレーしてきた自負がある中での大きな決断だっただけに、悔しさが胸中を覆い尽くす。
それでも、「ジェフに来てよかったか」という問いの返答には力がこもった。
「環境は素晴らしいですし、もちろんスタジアムも素晴らしい。選手のみんなも優しいので本当によかったですね」
そして、17日にフクアリで迎える栃木との今季最終戦への思いを、いつも穏やかな男はこう口にする。
「ホームですし、こういうシーズンになったことを忘れてもらえるようにではないですが、最後の一つは勝ちたい。来季に向けて、チームとしても個人としても落としていい試合ではないと思います」
文:大林洋平(エルゴラッソ千葉担当)
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川崎F.U-13が「ベトナム日本国際ユースカップU-13 inビンズン」に参加
川崎Fは14日、ベトナムにおいて「ベトナム日本国際ユースカップU-13 inビンズン」の大会記者会見に参加。ベトナムと日本の両国メディア合わせて30人ほど集まった会見で大会に対する意気込みや思いを語った。
川崎Fは13年にベトナムのビンズン省で行われた「東急ビンズンガーデンシティカップ2013」に川崎Fのトップチームが招待されたことをきっかけに、ベトナムの子どもたち向けのサッカー教室、ベトナムのサッカークラブのアカデミーへの指導者派遣など、ベトナムでの活動を継続して行ってきた。そんな中で川崎Fとベトナムのビンズン省を本拠地とするベカメックスビンズンFCが主体となり、今回の大会開催を検討。実行委員会を構成することで大会開催と至った。
会見で登壇した川崎フロンターレの藁科義弘社長は「次世代のトップアスリートを目指す子どもたちはサッカーを通じて、技術的、精神的に向上するだろうし、ベトナムと日本の友好関係の発展にも協力できるものと思っています。本大会に出場した選手たちがやがて両国の代表選手となり、国際舞台の場で競うことを願って止みません」とコメント。大会の成功を願っていた。
大会は12月14日に開幕。日本からは川崎Fのほかに、川崎市選抜、東急SレイエスFC、札幌のU-13チームが参加予定となっている。
文:林遼平(エルゴラッソ川崎F担当)
写真:©川崎フロンターレ
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劣勢をはね返す原動力に。不敗神話をもつ相馬勇紀が名古屋に合流
J1リーグ戦出場7試合、すべてで勝利という不敗神話をもつ、“名古屋でいま一番もっている男”相馬勇紀がチームに合流した。
今月10日、関東大学リーグで相馬の所属している早稲田大は、2-1で東京国際大に勝利。この結果2試合を残してリーグ戦優勝を決めた。相馬は「いまはホッとしている。今年は絶対残留をしないといけないという目標を立てていたが、1試合1試合積み重ねてきたことが結果につながって一番いい成績をとれた」と、一戦必勝が優勝という最高の結果につながったと言う。
と同時に今季の相馬は、6月29日に名古屋を受け入れ先として、JFA・Jリーグ特別指定選手に登録され、大学とJ1という二足のわらじを履く生活となった。Jデビュー戦となった8月11日の鹿島戦ではいきなりアシストを記録。初先発となったC大阪戦では決勝ゴールを決めた。大学のスケジュールが優先だったため出場試合数は7試合と少ないが、出場したリーグ戦すべてでチームは勝利している。
「負けていないのはたまたま。でも、不敗神話というのはネガティブではないし、うれしいこと。試合に出るからには結果を出すという思いでやってきた。結果を出せたら自然に勝利に近づくので、次の試合もその思いでプレーするだけです」と相馬。次節の広島戦についても「もし使ってもらえるなら結果で応えたい。大学と同じように目の前の試合に勝つという意識でプレーする」とこれまでのように次の1試合にフォーカスしていく。
ずっと名古屋の試合は映像でチェックし情報を得ていたという相馬。今後は名古屋の一員としてプレーしていきたいと言う。「今年1年は本当に充実していた。これだけ特別指定選手として試合に使ってもらえる選手は多くなかったと思うし、大学でもJ1でも使っていただいて本当に幸せです」
厳しいJ1残留争いもあと2試合ですべての結果が出る。名古屋の牛若丸がいまの劣勢をはね返す原動力となるかもしれない。
文:斎藤孝一(エルゴラッソ名古屋担当)
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スネ当て必須!? 久しぶりのマッチアップを前に、山形・本田拓也が、盟友の大分・馬場賢治に伝えたいこと
山形がホームで迎える今季最終節は、優勝争いを演じる大分を迎えることで雰囲気はややざわついている。「相手の優勝を目の前で見たくない」ということをモチベーションにする選手も多い中で、「なんも意識していない。逆に相手のほうがプレッシャーがかかるんじゃないですか」と言い放つのは本田拓也。自分たちがいかにプレーするかに徹する考えだが、「今年、不甲斐なかったので、最後ぐらいしっかりサポーターの皆さんにいい試合を見てもらいたいというのもあるし、天皇杯(準決勝)に向けても、勝って終わるのと負けて終わるのではだいぶ気持ちも変わってくる」といつも以上の奮闘を誓った。
その本田が、「賢ちゃんとできます。楽しみにしてます」と語るのが馬場賢治との対戦。「出会いは「ふと目が合った」小学4年。大分・馬場賢治と山形・本田拓也が挑む、特別なJ2最終節」でも触れられているが、二人は桐光学園高時代の同級生。ジュニア時代の県選抜時代から切磋琢磨してきた仲だ。
「昔っからうまかったですよ。どこいくのかなあと思って、(平塚の)ジュニアユースに上がったけど途中で金旭中に入って、その後、高校で一緒にできてという感じです」
二人の対戦は昨季の第4節、山形が讃岐を迎えたホーム開幕戦で実現しているが、後半戦のアウェイの対戦では馬場が離脱中。馬場が大分に移籍した今季は第2節に大銀ドームで試合が組まれていたが、オフに手術をした本田の復帰が間に合わなかった。今回実現すれば、久しぶりの対戦となる。ボランチの本田と、シャドーでプレーしている馬場。マッチアップは必至だ。
「楽しみなので、ガツガツいかないと。賢ちゃん、スネ当てを多分4つぐらい着けたほうがいいと思います。ふくらはぎと、スネと。言っておいてください(笑)」
不敵な笑みに、待ち切れない気持ちがにじんでいた。
文:佐藤円(エルゴラッソ山形担当)