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[書評]読むサッカーvol.28 『初心者の素朴な疑問に答えたサッカー観戦Q&A』
的を射た説明と知識の数々。禅問答的味わいのある回答集
何で? どうして? サッカー初心者の抱く疑問を、サッカーライターの西部謙司氏が解説していく本書。これまでいくつもの戦術本を手がけてきた著者が、彼らと目線を同じにしたソフトなタッチで、時にユーモアも交えながら巧みに描いていく“回答集”にはある意味で感嘆させられる。
その理由の一つは、単なるルールブックではないからである。著者の下に集められた質問集は、あまりに素朴で、ストレートなものばかり。案に違わず、読み進めていけば「オフサイドって何?」「スペースやゾーンって何?」といった質問も当然のごとく登場する。ただ、そもそもの興味の動機と言えば、実のところもっと純粋なのである。
「サッカーってほとんど点が入らないのに何が面白いの?」「試合中、監督って何してるの?」などの問いが、本書ではたびたび登場する。これはサッカー好きにとっても“聞かれたことはあるけど、どう答えていいか分からない”盲点だったりもする。純粋だからこそ頭を悩ませる疑問に対し、例えば後者の質問に著者は「(することは)あまりない」と回答している。サッカーの本質をかみ砕いて説明しているのが印象的だ。私もわずかながら取材経験があるが、実際、ある有名人物が「優れたチームの監督ほど、試合中はベンチに座っていることが多い」と話していたことを覚えている。
それでいて、決して単なるガイドブックでもないことも本書の魅力として記しておきたい。分かりやすく、時に面白おかしく描かれた各解説に深みを持たせているのが、ヨハン・クライフなど偉人たちの残した言葉やサッカーの歴史的背景、海外在住経験もある著者の体験談などである。素朴過ぎる質問とはおよそ相反する知識の数々が実例として紹介されており、そのペン先は初心者のみならず、“サッカー好き”に対しても向けられている。どこか禅問答的な味わいのある本書。読み終えると、少なからず自分のサッカーリテラシーが高まっていることに気付くのではないだろうか。
サッカー好きと、そうでない人をつなぐヒントが詰まっている本書。知りたい。教えたい。サッカーというコミュニケーションツールの“バイブル”として手にとってもらいたい。
文:村本 裕太(エルゴラッソ編集部)著者:西部 謙司(にしべ・けんじ)
発行:2月3日/出版社:内外出版社/価格:1,200円(本体価格)/ページ:192P
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