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昨季はともに山口でJ2全試合出場。徳島の島屋八徳が岐阜の庄司悦大の“たまに”を警戒
今季から徳島に加入した島屋八徳。13日にはホームに岐阜を迎えることになるが、その岐阜にはかつて山口でともにプレーしていた庄司悦大がおり、昨季は二人ともJ2リーグ戦で全試合出場を果たしている。
島屋は庄司について「キックの精度が高く、スルーパスもすごくセンスがあります。昨シーズンは僕が動き出して、欲しいところにドンピシャでボールを出してくれる選手でした」と説明し、ここまでパス数やポゼッション率で上位につける岐阜において「キーマンだと思います」と言い切る。そして、基本的にはゲームメークに回ることの多い庄司だが、「たまに前に出てきてシュートもあります。たまにですけど、その“たまに”が怖い」と加えた。
徳島、岐阜ともにボール保持率を高めながら試合を優位に運ぼうとするチーム同士。どちらも勝ちたい3連戦初戦だが、徳島としては是が非でも勝利して上位浮上を狙う。
文:柏原敏(エルゴラッソ徳島担当)
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鳥栖の健脚、MF高橋義希が体験した貴重な経験
昨季リーグトップの走行距離を記録し、鳥栖のアンカーとして存在感を発揮した高橋義希。今季はチームが試合中に布陣変更を行う際に交代を強いられるなど終盤の末脚を見せる前に退くことが増えていた。そして、J1第8節・神戸戦では今季初の先発落ち。代わって小川佳純が先発し、チームも勝利したことで続く第9節・鹿島戦でも高橋は先発落ちとなってしまった。
昨季の実績を考えれば想像もつかないような状況だったが、高橋は「何かが足りなかったり、良くなかったから外されたんだなと思ったけど、だからといって自分の中で何かを変えたわけではない」とその時期について振り返る。しかし、小川のプレーを見た高橋は「攻撃の部分ではやっぱり自分と違うし、自分にはできないこともあったりする」と感じていた。ただ、「刺激になった」と話すように意識の部分では変化も与えてくれていた。
そんな中で第10節・横浜FM戦で先発に復帰。自慢の走力を見せ、チームの完封勝利に貢献した。「自分らしさも出せたと思うし、チームとしても無失点に抑えることができて良かった」と内容と結果について一定の手ごたえを得ている様子だった。小川という存在が与えた競争は高橋の成長にとっても貴重なものになっている。
文:杉山 文宣(エルゴラッソ鳥栖担当)
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久保建英が示した“熱”。U-20W杯に持参するものは「気持ち」
20日に韓国で開幕するU-20W杯に出場するU-20日本代表が11日、静岡県内で合宿を開始した。2世代飛び級で招集されている15歳FW久保建英(FC東京U-18)も初日から合流し、パス回しでは技術の高さを生かした的確なキックを披露。さらにミニゲームでは初瀬亮(G大阪)のクロスを右足ヒールで華麗にラストパス。堂安律(G大阪)のゴールをアシストしてみせた。
前日の10日にはルヴァンカップ第5節・FC東京vs大宮の一戦に途中出場。この12日間で公式戦4試合を戦ってきた。「正直、今日はちょっと疲れが残っている」と話した久保だが、「いろいろな人に相談させてもらった上での出場だったので、問題はないです」と力強く言い切った。
これまでは技術や決定力の高さが取り上げられてきた。しかしこの日、自身初の世界大会を前に、珍しく久保は自ら熱を示してみせた。
記者が「大会期間中に何か特別に持参するものは?」と聞くと、少し間を置いてこう語った。
「・・・気持ち、ですか」
思わず記者陣からも驚きの声が上がり、それを聞いた本人もはにかんだ。
その一言は紛れもない本心である。「大会に出るからには、一番の目標は優勝」と先日話していたが、初戦の南アフリカ戦(21日)まであと10日に迫ったいま、久保の世界への“気持ち”が徐々に昂る。
「南アフリカだったらアフリカ予選の得点王の人がいる」と久保はすでに対戦相手の研究も進めている。ポルトガルのブラガでプレーするU-20南アフリカ代表のMFルーサー・シンは、171cmと小柄でドリブルやFKを得意とするなど、久保とスタイルが重なる。この日もあらためて初戦の相手について「南アフリカも含めて、アフリカ勢はユース年代が強いイメージ。そのイメージだけをしっかり持って戦いたい」と話した。一方で、自身が10歳からプレーしたバルセロナでの経験を踏まえて、こんな発言も残した。「自分はヨーロッパでやってきたと言っても、まだ体ができていない時代だった。ヨーロッパの中でもアフリカより身体能力が高いチームもある。ヨーロッパだから、アフリカだからと決めつけないで、相手を見ながらしっかりプレーしたい」。 大会への意欲と敵国への冷静な分析。まさに、心は熱く、頭はクールに――。久保は戦いに必要な両方をすでに携えている。
「ここからどんな準備をするかが大事。初戦を勝てばグループリーグ突破が現実的になる。勝つことが大事」。技術は久保の一番の武器。しかし彼は闘う意識を併せ持つ。テクニシャンの裏側にあるファイター気質。本大会に向けて、久保が熱を帯びてきた。
文:西川結城(エル・ゴラッソ日本代表担当)
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3試合無失点の長崎。その守備陣を支える田代真一の心構え
ゴールデンウイークの3連戦を2勝1分で乗り切った長崎。しかも、この3試合はいずれも無失点試合とチーム全体で高い守備意識を誇る長崎らしさを数字でも残した。
そんな中で最終ラインを統率し、粘り強い守備で大きな貢献を果たしているのが田代真一だ。しかし、田代本人は過去の結果にはとらわれない。「自信はあまり感じていないです。耐えるときに耐えるというのがいまはできているのでそこは良い」と淡々と話すに留めている。それよりも気にしているのは先のことだ。「仮に失点したときにチーム全体がバタバタしないようにしていきたい」といずれはくる失点のときを想定してチームが崩れてしまわないように日々の練習から気配りを見せている。
今節、対戦する千葉に対しても最終ラインを統率する立場の視点から「見ていておもしろい最終ラインの駆け引きをやっているなと感じます」と自分があの高いラインを統率するとしたら…という仮定をした上で面白味を感じている様子だった。
自身にとっても古巣戦となるが「フクアリは良いスタジアムだし、知っている選手もいるのであそこでやるのは楽しみ」と話す。4試合連続の完封、そして、2試合ぶりの勝利を目指し、田代が守備を統率する。
文:杉山文宣(エルゴラッソ長崎担当)
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着々と補強を進める千葉。スカウト陣の思惑とは?
千葉は来季に向け、着々と強化を進めている。
9日には育成組織出身のDF鳥海晃司(明治大)の加入を発表。それに先立ち、4月28日には高体連に限れば、今季Jクラブ内定者1号としてMF本田功輝(香川西高)の獲得も決まっており、迅速なスカウト活動が際立つ。
クラブの強化方針について、スカウト陣がメリットとして強調するのがプロ入りまでの準備期間。「プロに入って、いかに最初のタイミングでチャンスをつかむのかが大事。そこをいかにサポートするかも含めて、メリットがある」と稲垣雄也スカウト。この言葉を補足するのが斎藤大輔スカウトだ。「合流して時間がかかってしまうことは本人にもクラブにとってもマイナス」。入団までの約8カ月間、メンタル、フィジカル両面においてプロの心得を意識することで、スムーズに1年目に突入できるというのだ。
鳥海の獲得については、もう一つのメッセージの発信にもなるという。千葉は今後10年間でトップチームの育成組織出身者が占める割合を約半数にする高い目標を掲げている。斎藤スカウトは「プロに値する成長を見せてくれたのが一番」と前置きした上で、「大学に行っても、(強化担当が)追っていることも分かるし、現アカデミーの選手にもポジティブなニュース」と言葉に力を込める。
二人の評について、鳥海は「ユース(千葉U-18)ではボランチもプレーしていて、CB、SBとしてもユーティリティーにプレーできる」(斎藤スカウト)、本田は「ドリブルで打開できるのが特長。視野が狭かったりする選手が多い中、彼の場合は技術レベルも非常にしっかりしている」(稲垣スカウト)。彼らがどう成長し、来季、フクアリで活躍してくれるのか。いまから待ち遠しい。
文:大林洋平(エル・ゴラッソ千葉担当)
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呂比須ワグナー氏の監督就任が内定。休養中の三浦文丈前監督は辞任に
11日、新潟はトップチーム監督に呂比須ワグナー氏、コーチとしてサンドロ氏の就任内定を発表した。両氏とは、9日にブラジルで仮契約を締結済み。13日に来日し、20日の第12節・札幌戦から指揮を執ることを目指して、正式な契約手続きを進める予定となっている。
この日の練習後、聖籠町のクラブハウスで中野幸夫社長が報道陣に対応。呂比須氏について「監督経験があり、日本に愛着のある方。一番は、こうしたチームの状況を分かってくれた中で、一緒に戦ってくれるという確認がとれた」と、内定の理由を語った。
呂比須氏はクラブを通じ「このたびはアルビレックス新潟にチャンスを与えていただき、とても光栄です。アルビレックス新潟サポーターの皆さん、選手の皆さんとスタッフの皆さん、フロントの皆さんと一緒に、一戦一戦、大事に戦って、自分のベストを尽くして、試合に勝てるようにがんばっていきます」とコメントを発表している。
また同日、休養中だった三浦文丈前監督の辞任も発表された。14日にデンカビッグスワンスタジアムで行われる明治安田J1第11節・浦和戦は、10日のルヴァン杯C大阪戦に続き、片渕浩一郎コーチが監督を代行する。呂比須氏とサンドロ氏も視察に訪れる予定となっている。
文・野本桂子(エルゴラッソ新潟担当)
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ベールを脱いだ10番。湘南のシキーニョはこれからも“チームのためにプレーする”
J2第12節・町田戦。ついに湘南の背番号10がピッチに立った。「自分の夢である日本でプレーができた」とシキーニョが振り返る試合は、短い時間の中でチャンスを演出。キレのある動きを見せ、独特なリズムから生まれるドリブルでゴールに迫った。
けがや、コンディション不良、慣れない日本のサッカー。出場機会も恵まれない状況が続き、苦しいことも数多くあった。それでもシキーニョは周りの助けを得ながら徐々に調子を上げてきている。「湘南に来て5カ月が経って、日本のサッカーにも慣れてきたと思う。それは監督に出場機会をいただけたというのもあるし、細かいところまで仲間が自分のことをサポートしてくれたから」。
さらに大きな活躍が求められるシキーニョは、「自分としてはゴールを生むプレーをしたい。やっぱり一番の目的は勝つこと。そこを常に見せたい。一番はチームが勝つことが大事」と意気込む。もちろん個人技で相手を抜き去ることや、持ち前のトリッキーさで観る者を魅了することがストロングポイントだ。だが、本人も理解しているようにやるべきことは “チームのためにプレーする”こと。この献身的な思いは必ず良い結果を生むはずだ。
ついにベールを脱いだ湘南のNo.10。日本の環境にも慣れ、体の状態も万全に近付いている。期待が高まる中、これからどのようなプレーでスタジアムを沸かしてくれるのだろうか。今後が楽しみでならない。
文:高澤真輝(エル・ゴラッソ湘南担当)
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次節・京都戦に臨む山口のMF佐藤健太郎。古巣に見せたい「山口の良さ」
山口が次節で対戦するのは京都。MF佐藤健太郎(写真中央)にとっては古巣戦となる。佐藤はJ2第3節からボランチとして先発出場を続け、距離感やバランスに気を配りながら落ち着きのあるプレーで中盤を支えている。
得失点シーンこそ感情を表に出すが、基本的には平常心を保つことを心掛けており、「感情の起伏が激しいときはいろいろなところに自分のアンテナが向いていて、それは僕にとって好ましくない。自分やチーム、目の前のプレーに集中するのが一番」と話す。
古巣との対戦についても「在籍したチームにはほかのチームとは違う思い入れが自然に出るけど、1試合の重みは変わらない。個人的なことは置いておき、サッカーに集中できれば」と冷静に話す。京都については、「京都で1年間プレーしたからいまここにいられると思うし、いまがあるのは京都のおかげ」と感謝の言葉を聞かせてくれた。
山口は現在3連敗中で、20位まで順位を下げている。佐藤は「良いプレーはこれまでにもあったが、結果が出ないとフォーカスされない。何とか勝って良い意味で注目されれば。京都のサポーターの皆さんに僕が頑張っている姿を見てもらえるし、山口というチームの良さや、良い選手がたくさんいることを知ってもらえるような試合を見せたい」と意気込む。
文・写真:田辺 久豊(エルゴラッソ山口担当) -
FW松田力の定位置奪還計画はシンプルかつ実に“らしい”ものだった!
今季加入の新戦力ながら開幕からJ2第5節の山形戦までウェリントンの相棒として2トップの一角を担っていた福岡の松田力。しかし、その山形戦で左足首を痛めて戦線離脱。その間に同じく新加入のウィリアン・ポッピがウェリントンの新相棒として着々と評価を高めていった。前節の松本戦で途中出場ながら7試合ぶりにピッチに立った松田に、どんな『定位置奪還計画』を持っているのかぶつけてみた。すると……。
「練習からしっかり結果を出すしかない。出場のチャンスをもらったら、前線から相手ボールを追い回し、背後に飛び出し、スペースを作るオトリの動きも懸命にやる。それが僕のストロングポイントですから」と淡々と計画を明かした。
そんなふうに黒子役をいとわない松田にも欲がないわけではない。「得点はチームみんなで奪ったもの」と言う井原正巳監督は松田の仕事ぶりを評価しているが、FWなら自らゴールを奪いたいと思うのは当然の欲求だ。
「ウェリ(ントン)は頼りになる存在。けれども結果を残すたびに彼への警戒は強まる。そうなると僕が自由になるわけで……」
みなまで言うな。黒子が主役になるチャンスは必ず訪れる。そのチャンスを今季初ゴールという結果につなげるのが、今節の岡山戦であったとしても何ら不思議ではない。
文・写真:島田徹(エルゴラッソ北九州担当)
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北の守護神ク・ソンユン。遠藤保仁のFK、そしてオ・ジェソクとの対戦を楽しみに待つ
今週末は札幌ドームでG大阪と対戦する札幌。10日のルヴァンカップは試合が組まれておらず、前節から中7日という万全のスケジュールでこの試合に挑めることになる。
その中で、G大阪との対戦を楽しみにしている一人が韓国人GKク・ソンユンだ。「遠藤保仁選手のFKなどもそうだけれど、G大阪には良いシュートを放つ選手が何人もいる。そういう相手と戦えるのはやりがいがある」と心待ちにしている様子。もちろん、「少しでも気を抜いたらやられてしまう。90分間、タイムアップの笛が鳴るまで集中を保つことが大事」と気を引き締めることも忘れていない。
そしてG大阪には同胞のDFオ・ジェソクがいる。ク・ソンユンがC大阪在籍時にはともに食事に出かけるなど、親交の深かった選手。「あのころは、僕はまったく試合に出ることができていなかった。でも、あれから数年を経て、同じグラウンドで戦えるかもしれないというところまできた。対戦ができたら、本当にうれしい」。
しっかりとゴール前に立ちはだかり、G大阪の攻撃を封じることでオ・ジェソクに成長の証を示すつもりだ。
文:斉藤宏則(エルゴラッソ札幌担当)
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