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昨季、期限付き移籍で岐阜に在籍したFW田中達也。古巣戦を前に「準備はできている」
ほぼ互角の内容で戦った13日のJ2第13節・湘南戦だったが、後半ロスタイムにPKを与えて今季2度目の4連敗となった熊本。負傷者がまた少し出ており、中3日の連戦は総力で乗り切らなくてはならない。
次の岐阜戦に向けては村上巧の出場停止などもあって一部メンバーに変更がありそうだが、昨季、期限付き移籍で岐阜に在籍した田中達也も出場機会をうかがう。
「高木義成さんなんかにはいまもよく連絡をもらったりしていますし、岐阜戦だから(遠征に)帯同したいというのはもちろんあります。でもそんなに意識はしていなくて、相手がどこであっても試合に出るチャンスをつかみたい。そういう気持ちで今は練習に取り組めていますし、毎日成長できている感じがある」という。
ひと月程前まで、ベンチに入れず悩んだ時期もあったというが、それが吹っ切れたきっかけは北嶋秀朗コーチとのやりとり。
「お前はうまくないんだから、強みを出せと。自分で自信を持っていたのも、プロになれたのもドリブルやスピードを生かした裏への突破があったからなのに、不得意な部分を出さないことを意識していたら、良いところも出なくなっていたんです。そこをキタジさんにクリアにしてもらえたので迷いがなくなってポジティブにやれているし、調子も上がっている感じがあります。いつでも準備はできてまいす」
本来の強みをピッチで表現することが、昨季在籍した岐阜の関係者とサポーター、そして北嶋コーチらスタッフ陣への感謝を伝える術だ。
文・写真:井芹貴志(エルゴラッソ熊本担当)
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[書評]読むサッカーvol.30 『サッカーが劇的にうまくなるタニラダー・メソッド』
読んで納得。これであなたも“タニラダー”が欲しくなる
Jリーグが誕生した93年以降、国内外からの情報発信が増えたことで学ぶ機会も増え、日本サッカーはコーチングにおいても大きく進歩した。しかし、多くの情報があふれる中、そこから取捨選択し、消化し、コーチングに生かすという点においては、個々のパーソナリティーや能力、日本的なメンタリティーや環境の影響が大きく、効率良く消化・吸収できているのか疑問もある。
著者の谷真一郎氏は、「明らかに間違っていることがまかりとおっている面はまだあり、改善の余地はある」と指摘する。谷氏は柏、仙台、横浜FCを経て、10年からは甲府でフィジカルコーチを務めており、J2優勝を含めた2度のJ1昇格、J2降格、4度のJ1残留を経験してきた。J1で最も予算規模が小さいクラブでは、選手層が厚くないだけに、けがをいかに減らすか、復帰をいかに確実にサポートするかが重要になる。
加えて、谷氏はベテラン・若手に関係なく現有選手の能力向上という面でもサポートをしてきた。甲府にはアスリート性の高い選手は多くないが、質の高い動きを引き出すことでその差は小さくできる。そのツールが“タニラダー”だ。ただ、本書はそのタニラダーがなくても役立つ情報も多く、悩める小中高生や保護者の疑問に答える内容にもなっている。
「足の速さは遺伝?」という項では、100%で力んで走るより、70~90%で走るほうが結果的に速くなる理由を解説。車に例えると、エンジンパワーを上げるのではなく、まずは動力伝達を改善し、空気抵抗を減らすという方向性だ。また、ヘディング後もボールを見続けることでブレが少なくなるという技術面のコツや裏付けも豊富に解説されている。
そして、谷氏自身の経験も紹介されている。日本でブラジル人選手といえば、しなやかな身のこなしから独特なテクニックを発揮するイメージを持つ人は少なくないが、「体が柔らかいブラジル人選手にはまだ出会ったことがない」という驚くべき例を挙げて、柔軟性について述べる項があるなど、学ぶために我慢して読む必要はなく、スラスラと読める構成になっている。
読んで納得。興味が湧けばDVD付きの“タニラダー”の購入も検討してみてほしい。
文・松尾 潤(エルゴラッソ甲府担当)著者:谷 真一郎(たに・しんいちろう)
発行:4月7日/出版社:扶桑社/価格:1,400円(本体価格)/ページ:212P