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「○○が大事ってことですよ」。31歳になった鳥栖・水野晃樹が説くサッカー選手にとって大切なものとは?
前節、清水戦では途中交代で今季リーグ戦に初出場し、アディショナルタイムに同点弾を挙げ、アウェイでの勝ち点1獲得に貢献した鳥栖の水野晃樹。しかし、水野に安心する様子はない。そこにあるのは危機感だった。「けが人が戻ってきてまたベンチ外になったら意味がない。そうならないために結果を残すしかない」と、次の結果へどん欲に視線を向けている。
鳥栖加入後は我慢を続けてきた。移籍先が決まらず、コンディションが落ちた中で沖縄キャンプ中のチームに合流。ほかの選手たちがすでにシーズンを戦うコンディションを作り上げている中、結果を出さないといけない焦りを必死に押し殺した。「自分の開幕は4月から」と話し、練習が終われば鎌田大地や太田徹郎といった選手たちと追加でジョギングを行い、体を絞ってきた。そして、4月に入ると我慢して続けてきた努力は実を結ぶ。「キャンプ中と比べて体重は6kg弱、体脂肪も5%くらい落ちたかな。いまの体脂肪は8.5%」と自身で明かしたように顔つきも体のシルエットも加入当初とは明らかに見違えた。
鳥栖加入後、初のリーグ戦出場で奪った得点を「我慢が大事ってことですよ。この年齢になってやっと我慢ができるようになったから(笑)」とおどけながら振り返った。しかし、その言葉も決して冗談だけではないだろう。若いころは刺々しさもあれば、「噛みつくくらいだった」と自分でも振り返る。31歳になったいま、「反発心がなくなったら終わりだと思っている」と話す一方で、「それでも我慢して出場機会を狙っていればこうやってチャンスは来るんだなとあらためて分かった。どんな状況になっても我慢強く準備するだけですね。若手の良い手本になっていけばベストでしょ」とも話す。
年齢を重ねて水野が得た我慢の重要性。我慢が生んだ水野の得点は勝ち点1だけでなくチームにとってさらなる価値をもたらしたのかもしれない。
文:杉山文宣(エルゴラッソ鳥栖担当)
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3連勝を懸けて戦う福岡戦。湘南・曺貴裁監督が心待ちにする戦友たちとの再会
前節・熊本戦に勝利し、首位へ返り咲いた湘南。今節は3連勝を懸けて戦う。相手となる福岡には、史上最速でJ1昇格を決めた14年のメンバー、ウェリントンと亀川諒史が所属。かつてともに戦った戦友との対戦を曺貴裁監督は待ち望む。
「アイツらがクラブの歴史を作ってきたことは間違いない。カメ(亀川)はその後、五輪に出てくれた。ウェリントンは新しいクラブで頑張っている。彼らも湘南に対する思いがあると思う。そういう選手とやるのは非常に楽しみ」。
そして元湘南戦士は福岡の中心選手として立ちはだかる。ヘディングの強さ、そして高い決定力を誇る背番号17。圧倒的な運動量でサイドを制圧する背番号18。この2選手のプレーには曺貴裁監督も要警戒。「彼らのストロング(ポイント)を出させないというのも一つのポイントになる。ただ、良い選手なので、それをやらせないようにやってくる」。この激しい攻防が勝負を分けるポイントになりそうだ。
試合中はもちろん敵同士。だが、終了のホイッスルが吹かれれば、お互いを称え合いかつての仲間と会話がはずむ。「終わったらゆっくり話したい」と曺貴裁監督は頬を緩ませ、再会を心待ちにしている。
文:高澤真輝(エル・ゴラッソ湘南担当)
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パク・チャニョン、待望のJ初ゴールに「次も点を取りたい」
前節・京都戦で、DFパク・チャニョンがJ初ゴールを決めた。58分、左CKからのボールを高い打点で合わせるヘディングシュート。山口はこの同点ゴールで引き分けに持ち込んだ。
得点シーンについて、「相手はゾーンで守っていた。闘莉王選手の後ろのところは強いと聞いていたので、ニアをねらっていた。コヅくん(小塚)のボールがよかった」とパク・チャニョン。CBながら、この試合で放ったシュートが両チーム最多の5本だったことを聞き、「本数はあまり覚えていなかったので『そんなに打ったかな?』とビックリした」と笑顔を見せる。
守っては、京都のFW田中マルクス闘莉王とマッチアップする機会も多く、高身長を生かして力強く競り合った。上野展裕監督は「ポテンシャルは高い選手。これまで経験が足りなかったが、試合を重ねるたびに成長している」と高く評価する。
彼の同点ゴールによって連敗を『3』で止めた山口。次節・群馬戦は勝利して浮上のきっかけをつかみたい。パク・チャニョンは「チームのことも自分のことも、ちゃんと準備をすれば良い結果が出ると思う。群馬戦でも点を取りたい」と意気込んでいる。
文・写真:田辺久豊(エルゴラッソ山口担当)
写真:練習に励むパク・チャニョン(左)
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「ここでやらないといけない」。GK増田卓也が誓う“14年の再現”
前節・千葉戦は今季ワーストとなる5失点を喫しての大敗。GK増田卓也にとっても「屈辱的な負け方」と話すほど悔しさの残る試合であり、「何点かは防がないといけないピンチもあったので、そこが今後の自分にとっての課題」と自分自身と向き合っている。
ただし、「落ち込んでいるヒマはない」と気持ちは切り替えている。
実は増田にとって、5失点は2度目の経験。広島在籍時の14年、第18節・鹿島戦(1●5)で今回の千葉戦と同じく前半に1失点、後半に4失点という形を味わっている。だからこそ、「ああいう経験を生かして次に臨むことが選手として必要なこと」と切り替えの重要性を強調する。実際、5失点した鹿島戦のあとに迎えた第19節・鳥栖戦(1○0)では完封を達成している増田。今節・大分戦もその再現を目指す。
また、彼にはサポーターへの思いもある。「フクアリではサポーターのみなさんに来てもらっていたのに悔しい思いをさせてしまった。そのぶん、ここでやらないといけない。応援してもらっているので、その気持ちにより応えたいという思いになる試合」と、サポーターへの思いをより強くして臨むことになりそうだ。
「自分たちにミスが出たあとにやられないように守るのがGKとしての役目」
増田がそう話す自分の役割を達成できれば、長崎の勝利の可能性もより高まるはずだ。
文・杉山文宣(エルゴラッソ長崎担当)