-
あの日と同じ日に同じ場所で。湘南が迎える“運命的な”京都戦
14年9月23日、湘南はJ史上最速でJ1昇格を果たした。
引き分け以上で昇格が決まる状況だった第33節・京都戦、83分まで1点のリードを許す展開だった。その苦しい雰囲気を一蹴したのはDF島村毅の左足。豪快なミドルシュートが84分にゴールネットを突き刺し、最高の瞬間に皆が酔いしれた。
殊勲の島村はこう当時を振り返る。
「14年は僕なりのプレッシャーはあった。本当にあの1年間は何もしていなかった。京都戦で何かしなきゃ終わりだというくらいの思いでやっていた。先発で3、4試合しか出ていないのに、結果的にちょっと存在感のある人になったので、してやったりだったなと(笑)。そういうプレッシャーの中、結果を出せたのは良かった」
そして再び相まみえる17年西京極決戦。背番号30は「西京極は大好き。思い出の地なので良い勝利と良いゴールを取れたら良いなと思う。ミドルシュートも決めたいですね」と強く意気込み、ゴールを奪いにいく姿勢に一点の曇りもない。
あれから3年のときが過ぎ、9月23日という同じ日付に行われる運命的な一戦。このゲームで何かが決まるような試合ではないが、白熱した展開になることは間違いない。
文・高澤真輝(エルゴラッソ湘南担当)
-
天皇杯4回戦・G大阪戦。柏の古賀太陽がプロ初ゴールを振り返る
20日に行われた天皇杯4回戦・G大阪戦でプロ初ゴールを挙げた古賀太陽だが、「どう喜べば分からない感じ…」と戸惑いの表情を浮かべながら記念すべきゴールを振り返った。
1点のリードで迎えた48分、伊東純也からのスルーパスに抜け出した右SBの古賀は右サイド深くに侵入。「練習中からチームとしてGKとディフェンスラインの間は常に狙っていこうと共有していた。そこに流し込めば相手に当たって何か起きたりするんじゃないかと思ったので、そこに流し込んだ」とニアサイドに走りこんだクリスティアーノを狙ったグラウンダーのクロスを送った。
すると、そのボールは相手DFに当たりコースが変わりそのままゴール。当初はオウンゴールとアナウンスされていたが、試合中に記録が変わり、18歳のルーキーのゴールと記録された。
しかし、当の本人はどこか納得いっていない様子。「うれしいですけど、正直自分のゴールだとは思っていなかったので驚きのほうが大きいですね。試合中に電光掲示板を見て“古賀太陽”となっていたので、『何でだろう?』と思って、そこで知りました。チームのみんなはオウンゴールだろという感じですね(笑)。映像を見ても明らかに触っていますもんね。別にシュートでもないから…(笑)」と苦笑いを浮かべた。
それでも、「(初得点は)シュートで決めたかったです。本当にセットプレーのこぼれ球をちょんと押し込むだけでも良いので、何かしらの形で、シュートで点を決めたかった」と“悔しさ”をにじませる背番号26だが、「リーグ戦の初ゴールはまだ残っているよ」と記者陣から“励まし”を受けると、まだ18歳の少年らしく「そうですね」と笑顔を浮かべた。
文:須賀大輔(エルゴラッソ柏担当)
-
チャナティップの両親が練習を見学。「たくさん注目してくれてうれしい」
今季夏からチームに加わり、その高い推進力を武器にいまやチームの攻撃の核を担っている状況の“タイのメッシ”ことタイ代表FWチャナティップ。21日の練習でも紅白戦で切れ味鋭いフェイントやスルーパスを随所で披露し、ヘイスらアタッカー陣を巧みに動かしていた。前節は神戸に敗れ、今季ここまでアウェイでの未勝利が続いてしまっているが、今週末のホーム・新潟戦ではこのチャナティップ率いるアタッカー陣が躍動し、ホームスタジアムに歓喜を呼び込んでくれることを期待したい。
そうした中で、“タイのメッシ”にさらなるパワーが注入された。前日に来日したばかりの両親が練習場を訪れ、息子のプレーぶりを見学したのである。プレーにいつも以上のパワーを感じたのも、そのせいかもしれない。もちろん、タイの英雄の両親だけあって、姿を現すとタイメディアがすぐに取り囲みインタビュー取材を開始。あらためてチャナティップの知名度の高さを感じさせられた。練習後は、この日も多くのメディアから取材を受け多忙なチャナティップだったが、父コンポップさんの姿を見るとたちまち笑顔に。「ベリーハッピー」と率直に感想を明かし、自らの運転でランチへと出かけていった。ちなみに、ピッチ上でTVインタビューを受けていた息子の姿を眺めていたコンポップさんは、「メディアの方もたくさん注目してくれてうれしい。練習場も素晴らしいですね」と息子の新天地での環境を知り、頬を緩めていた。
文・写真:斉藤宏則(エルゴラッソ札幌担当)
-
組織で勝つ。愛媛の田中裕人が横浜FC戦に向けて抱負を語る
J2第32節・福岡戦でチームの主将である愛媛の小島秀仁が負傷離脱したことで、チームの心臓部であるボランチの重責を担うことが求められている田中裕人。
田中は今季、最終ラインでの器用がベースになっているが、もともとの本職はボランチ。第31節・岐阜戦で今季初めてボランチで先発のピッチに立つと、翌節の福岡戦ではアンカーポジションに入って守備でシャットアウト。チームの連敗脱出に貢献した。
今節の対戦相手である横浜FCには前回の対戦で0-4の大敗を喫した。田中自身はその試合に出場していないが、ピッチ外から「前回はアウェイの空気に呑まれていたし、相手の勢いにも押された」と悔しさは十分に味わっていた。だからこそ、「今回はこっちのホーム。逆にこっちの勢いで前半から良い戦いができれば全然勝つ可能性はある」と今節でのリベンジを誓う。
横浜FCは夏の補強でレアンドロ・ドミンゲスを加えてさらに個の能力が増しているが、「個は向こうのほうが上かもしれないけど、こっちは個でやっているチームではない」と同じ土俵で戦うつもりはない。 「自分一人で何とかしようと思わないし、自分はそういうタイプの選手でもない。味方の力を借りながらやっていきたい」とあくまでも組織として相手を凌駕し、勝ち点3を手にすることを目指す。
文・写真:松本隆志(エルゴラッソ愛媛担当)
-
けが人続きも、ここ5試合3勝2分の負けなし。アクシデントをはね除ける横浜FCの総合力
横浜FCはここ3試合、前半に負傷交代のアクシデントが続いている。
前々節・湘南戦でMF野村直輝が負傷し、45+3分にDF小宮山尊信が途中出場。前々節の金沢戦ではDF藤井悠太が負傷し、またも45+1分に小宮山。前節の東京V戦では開始1分ももたないうちにDF永田拓也が負傷し、7分にMF野崎陽介が「ワケも分からんうちに『スパイク履き替えろ』て言われて(笑)」ピッチに送り出された。
こうも続くと、お祓いが必要な状況かもしれないが、J1自動昇格を狙える位置にあってここ5試合を3勝2分の負けなしで乗り切るチームには、その苦境をはね除ける勢いがある。前々節は交代出場の小宮山がレアンドロ・ドミンゲスの先制点をアシスト。前節は野崎がホーム・三ツ沢で3年ぶりとなるゴールを奪った。
「シーズンも第3クールに入って、誰が入っても意思統一してやれている。練習でしっかりやってくれている選手が『よし、俺がやってやる』という気持ちを出してくれているのは前向きなこと」と、中田監督もシーズン終盤にきてのチームの総合力に満足げ。
ただ、そうは言っても選手は有限。特に今回、けがに見舞われたのは3人ともサイドプレーヤーだけに、今節・愛媛戦ではけが人が出ないように祈るばかりだ。
文:芥川和久(エルゴラッソ横浜FC担当)
(写真):途中出場で結果を残す小宮山など、横浜FCはチームの総合力が高まっている -
プロ入り後初のC大阪戦へ。椎橋慧也、自身初めてのキンチョウスタジアムについては……
仙台2年目のDF椎橋慧也が、自身初挑戦となるキンチョウスタジアムでの一戦に向けて、意気込みを口にした。
今節・C大阪戦をキンチョウスタジアムで戦う仙台にとって、同所での対戦は14年J1第13節以来。このときは大阪生まれのリャン・ヨンギの得点により、1-0で勝利した。
その後に仙台に加わった若手には、まだこの場所でプレーしたことのない選手もいる。2年目の椎橋もその一人で、今季J1第16節(2●4)の対戦時には出場していなかったため、今節に出場できればこれが自身にとってプロ入り後初めてのC大阪戦になる。
もともとボランチだが、今季の椎橋は主に3バックの一角でプレー。前節は、FC東京を相手に粘り強い守備を見せた。「速さのある相手には裏を取られないように、間合いを詰めながら、周囲の選手とともに追いこむことができました。強さを前面に押し出してくる相手は、もともと得意なのでしっかり守れました」と、守備に手ごたえを得た。
強力な攻撃陣がそろう次節のC大阪相手にも、「相手の特徴を見てしっかり守り、しっかり優位性を作りたい。気持ちとしてはアウェイもホームも関係なく、100%を出し切りたい」と強い気持ちで臨む。
試合会場については、「キンチョウスタジアムは初めてですが、緊張(キンチョウ)しないように頑張ります」と、12年J1第4節を前に当時の手倉森誠監督(現・日本代表コーチ)が発して以来となるダジャレを交えて意気込んだ。
文・写真:板垣晴朗(エルゴラッソ仙台担当)
-
「いまを楽しむこと」。6戦未勝利の中、指揮官と主将が口にする共通ワード
6戦未勝利という苦しい状況の中で迎える今節・岐阜戦を前に、指揮官と主将の口から共通ワードが出てきた。それは「楽しむこと」。
三門雄大の場合は、「自分たちがやっていて楽しい、見ている人がドキドキワクワクするようなプレーを見せることが必要」との言葉どおり、主にいまのチームの課題でもある攻撃面(ここ6試合での得点は4にとどまっている)の改善にはアイディアと遊び心の創出が大事で、そのために選手が「プレーを楽しむべきだ」との考え。
井原正巳監督が言う「楽しむ」とは、戦いに臨む上での心の持ちようについてのもので、「確かに苦しい状況ではあるが、このシーズン終盤になってもヒリヒリとするような緊張感の中でリーグ戦を戦えることを喜びに感じて、1試合1試合を楽しむくらいの気持ちでいたい」と、良くない状況だからこそ物事をポジティブに捉えるべきだとの考えが、そこにはある。
もちろん、いまの状況でエンジョイすることがどんなに難しいことかは井原監督も三門も十分に承知していること。でも、その困難なことをやってのけなければ、目標の達成や歓喜を手に届かないことも分かっているからこそ、あえて楽しむことをテーマに掲げるのだと思う。
そうだ、“今”を楽しもう!
文・写真:島田徹(エルゴラッソ福岡担当)
-
今節・大分戦、金沢の山﨑雅人に19試合ぶり先発出場の可能性
金沢のFW山﨑雅人が、19戦ぶりに先発する可能性が浮上している。
20日と21日、今節・大分戦に向けたトレーニングで2日続けて主力組に入り、2トップの一角でプレー。ほかの選手と入れ替わる時間もあり、現時点で先発濃厚とまでは言えないものの、現実味を帯びてきた。
柳下正明監督は山﨑について「ここ一カ月くらい状態は良くなっている。動きがスピーディーでスピード感が出てきている」と話す。
前節・名古屋戦に途中出場した山﨑は、スペースを突く動き、ボールに絡むプレーでチームのギアを上げ、勝利に貢献。山﨑は「試合に勝つことがすべてなので良かった」としながらも、「個人的には最後のシュートの思い切り、得点へのどん欲さが足りなさ過ぎた」と悔やむ。
「長い時間チャンスをもらえた。ああいう試合で結果を残さないと、サブの立場からすると次(のチャンス)がなかなか難しくなる。もっとどん欲にゴールを狙うことを意識してやりたい」
大分戦での今季初ゴールが期待される。
文・野中拓也(エルゴラッソ金沢担当)