クラブ12年ぶりのJ1で躍進を続ける京都。
“心臓”としてチームを動かすのが20歳・川﨑颯太だ。
プロ3年目にして初挑戦となった最高峰での戦い、ドバイカップでの経験、24年のパリ五輪への思いなど、今季ここまでとこれからについて話を聞いた。
またインタビューの最後には、Twitterで募集したファン・サポーターからの質問にも答えてもらった。
聞き手:雨堤 俊祐 取材日:4月21日(木)
初めてのJ1舞台―開幕から2カ月が経過しましたが、ここまでの戦いを振り返っていただけますか。「自分たちのサッカーを見せること、僕個人でいうと球際の強さなどを出そうと思っていました。浦和との開幕戦(1○0)は勝利することができましたが、そのあとのC大阪戦(第2節/1△1)など、レベルの高い相手と戦う中で自分たちのよさを出せない試合も出てきました。僕自身、持ち味を出せない時間がJ2のころよりも増えています。その中でも勝点3をあきらめないことや勝点1を取りにいくことなど、自分たちのサッカーができないからといってそこで放棄するのではなく、勝点を取るために何ができるのかということを考えて取り組めていることが、いまの結果にもつながっていると思います」
―クラブとしては12年ぶり、川﨑選手にとっては初のJ1です。「自分たちの切り替えの早さや走る部分は、間違いなくJ1でもトップレベルだなと感じています。それはスプリント数や走行距離といった数字にも表れていますが、それ以上に得点シーンでシュートを決めた選手以外に何人の選手がエリア内に入っているか、ピンチのときにどれだけ自陣へ戻れているかなどを見ていただければ、皆さんにも分かっていただけるかなと思います。一方で、できなかったというわけではないのですが、日本代表を経験している選手たちは想像以上にうまくて強いし、1対1でまだ勝てないなと感じました。清武選手(清武弘嗣/C大阪)やイニエスタ選手(アンドレス・イニエスタ/神戸)など、いまは個で勝てない選手たちにももっと勝てるようにしていかなければ、J1屈指のボランチにはなれないなと感じています」
―J2を戦った昨季も話していましたよね。「相手と自分の1対1のように見えて、ボールを受ける前から勝負が始まっています。ポジショニングや予測、攻守の切り替えなどにおいて、ボールを持った相手との1対1で勝つのが難しいこともありますし、清武選手の場合はいいポジションを取ってくるので2歩3歩届かない場面がありました。一方で、11対11の中で近くにいる選手と対峙すると考えた場合、特定の選手だけに意識をもっていくわけにはいきません。チームとして動く中で相手と対峙するということを考えれば、出足の早さや自分が奪えなくても2人目、3人目でボールを奪うことなど、戦う術は少しずつつかめてきているのかなという気がします」
―イニエスタ選手のうまさはどこに感じましたか?「何人もの選手が話していると思いますが、イニエスタ選手はボールを出すとき、ワンタッチでパスを出してきて、パスコースが2つも3つもあります。そのすべてのパスコースを消し切ることは無理だし、強く当たりにいくことも難しい。なおかつ、最後のところで判断を変えてきそうな雰囲気があるんです。寄せにいってもターンされるのではないか、とか。イニエスタ選手の選択肢を一つに絞り切れないから、なかなかボールを奪えない。常に余裕をもって準備していると感じましたし、『食いついたらやられるのではないか』と思わせる落ち着きや首の振り方など、独特な雰囲気がある選手でした」
―攻撃面ではJ1初ゴールを決めるなど、進化を見せています。「守備だけを頑張っていればいいわけではありません。攻撃に出ていくことも求められていて実行しようとしていますが、例えばG大阪戦(第7節/1△1)だとパトリック選手のように前線に強力な選手がいたので、カウンターを食らうことも考えてあまり前にいけない場面が何度かありました。それでも(中野)桂太が中盤からゴール前へ出ていってゴールを決めた場面や、慎平くん(福岡)がゴールを奪った場面のように、やっぱり勇敢なプレーをしないと得点はできないと思います。そこは自分の中でも意識を変えていかないといけないなと感じています。ウチには将平くん(武田)のように中盤でバランスを取ったり、慎平くんのように気を利かせてくれたりする選手たちがいます。自分がどんどん前にいってチャンスを作れる場面が増えていけば、チームとしての攻撃にも厚みが出るはずです」
―攻撃面での状況判断が試合を重ねるごとによくなっている印象もあります。「ボランチがうまいか下手か、気を利かせられるかどうかで、ボールを前につないで攻めることができるか、それとも大きく前に蹴って終わってしまうかが変わってきます。個人的にはまだまだ味方からのパスを引き出せていないなと感じていますが、G大阪戦あたりからチャレンジしていく意識が高まっていて、少しずつですがサポートの位置はよくなっていると思います。パスをもらってからのプレーがまだまだ課題だと思っていますが、チャレンジは試合を重ねるごとにできています。監督からも『もっと自由に動いていいんじゃないか。どんどんボールに触って、お前がボールを引き出していくんだ』と言われました。真ん中にポジションを取ることに少しこだわり過ぎていたのかもしれません」
―昨季も悩みながら課題を解決していきましたが、今年はJ1でまた違う問題にも取り組みながら進歩を続けているのですね。「そうですね。また一つレベルの高い悩みというか、昨季よりもレベルが上がった中での次の取り組みだと思います。手前を使うだけではなくて、さらに奥を意識したり、スルーパスにチャレンジしてみたりするとか、ゲーム展開によってそれらを発揮すべき場面も変わってきますし、そういうところを感じ取れるようにサッカーの勉強をしたり、ピッチの上でチャレンジしたり、先輩の話を聞いたりして、どんどん吸収していきたいです」
初得点は“頭”から―J1初得点は意外と言っては失礼かもしれませんが、セットプレーから空中戦に競り勝って頭で決めました。「鳥栖戦(第8節/3○1)ではチームとして狙っていました。僕をターゲットでいくと言われたときは正直びっくりしましたが、慎平くんがいいクロスを上げると信じて入っていきました。滞空時間が長くて落下地点の読みやすいボールを上げてくれましたし、将平くん(武田)も相手をブロックしてくれました。思い切っていってやろうと思っていた場面です。昨季の山口戦(J2第35節/1△1)でCKから決定的なヘディングを外した場面があったので、今度は決めてやろうという強いモチベーションで入ったことを覚えています。飛び上がってのヘディングというのは意外に思われるかもしれませんが、武器は何個あってもいいと思うので、セットプレーに関われることも自分の強みとして、これからも練習していきたいです」
―第9節・柏戦(2○0)では10選手をパスが経由して得点が決まりましたが、唯一ボールに触らなかったのが川﨑選手でした。「何かの記事で10人が関わったというのを見たのですが、唯一関わっていないのは多分自分だなと思いました(笑)。ハイライトを見てみると、やっぱり僕でしたね。もちろん11人全員が触ったゴールのほうがキレイかもしれませんが、僕がボールをもらおうと動いたことでほかの選手がフリーとなった部分もあると思います。ボールに触ってはいないけど、ボールに関わってはいると思っています」
―今年は試合中に3バックに変化することが多いです。ホールディング・セブン(アンカーの位置に立ち、自分とGK、2CB以外の7人をコントロールする役割)のときとは少し違う並びになることもありますが、調整していることはありますか?「ダブルボランチになったとしても、そこまでやることは変わりません。3バックだからといって後ろに下がり過ぎるのではなくて、ある程度、相手を引き出した上で縦のパスコースを切りながら少しずつプレスをかけるなど、チームとしてやりたいことは4バックでも3バックでもそれほど大きく変わりません。3バックになればCBの選手が出ていきやすいという利点もありますし、システムによる考え方の違いにストレスを感じることはないですね。スコアなど、試合展開によって考え方も変わってきます。例えば、勝っているときならやみくもにいくべきではない、というのも理解しながら戦っています」
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