センセーショナルだった。
それまでJ1出場は、4年前のわずか2試合のみ。
かつてはJ3にもいた男がJ1の舞台でビッグセーブを連発し、No.1の平均セーブ数を記録することとなった。
第9節・広島戦で負傷するまで、磐田のGK三浦龍輝が残したインパクトは決して小さなものではない。
それでも三浦が口にするのは、“危機感”に似た言葉ばかり。
背景にあるのは、過去の歩み。
「だから、僕は常に成長し続けないといけない」。
努力ではい上がってきた守護神が語る、これまでとこれからー。
聞き手:森 亮太 取材日:4月20日(水)
リーグNo.1でもなお、「もっとやらなきゃ」―自身4年ぶりのJ1出場で、今季は開幕からチームを救うセーブを見せ続けてきました。ここまでを振り返っていかがでしょうか。
「自信をもてる部分はそれなりにありましたけど、同時に(J1では)スキを作ったらやられてしまうことも感じています。完封がすごく難しいなと思いますね。自分の中では(セーブのところが)まだ武器になっていない感覚です」
―とはいえ、1試合平均のセーブ数『4.2』は、リーグ1位です。それだけ止めている証で、誇れる数字でもあると思います。
「もっとやらなきゃダメだと思っていますね」
―そう感じるのは、完封がまだ一度と結果が伴っていないからでしょうか。
「もちろんそれもありますけど、狙って(ボールを)取れている場面がまだまだ少ないです。自分の狙いどおりではないというか、間合いにしても、相手のほうが優勢なところが結構あるので、もう少し自分の間合いにもっていきたいです。シュートストップのほかでも、受け身になってしまうところがあるので、まだまだ改善できると思っています。
ただ、(J1でプレーできている)やりがいはすごくありますね。ここまで多くのプレー機会をもらい、試合に出られているからこそ、毎試合のいろいろなシーンで、チャレンジができています。すごく成長できる期間だと思っています」
―特にアウェイの第5節・浦和戦(1●4)は、4失点の数字だけでは測れないスーパーセーブを連発するなど、J1の舞台でインパクトを残した試合でもありました。
「すごくいいスタジアムで、たくさんのサポーターがいて、(気持ちが)上がるだろうなと思っていたので、いかに落ち着いて試合に入れるかが大事でした。最初(7分)に(キャスパー・)ユンカー選手のシュートを止められて、うまく試合に入れましたね。その直後(8分)にCKから失点してしまいましたが、逆にあそこでスッと落ち着けたところもありました」
―SNSでは『あのGKは何者なんだ!?』という反響もありましたよ。
「僕の知り合いだけでなく、インスタでも『救ってもらった』というコメントをたくさんもらいましたけど、自分はある程度ドライに受け取っていました。いくら止めても4失点している事実は変わらないので、『いやいや』と。もちろん、(周囲に)期待してもらっているのは自分でも感じていますが、この順位(8位/第9節終了時点)ですし、しっかりと地に足をつけてプレーしていきたいと思っています」
―土壇場のミスで追いつかれた第7節・川崎F戦(1△1)のような悔しい経験もしました。この試合については、どう捉えていますか。
「その前の浦和戦や柏戦(第6節/0●2)がチームとしてな
かなかうまくいかなかったのですが、川崎F戦は受け身になり過ぎず、組織的に、自分たちのタイミングでボールを取りにいくことができていました。個人的なプレーとしてもよくて『このまま終われれば、勢いに乗れる』と思っていたので、最後の最後で自分の(キャッチ)ミスで勝点2を失ってしまい、自分に対して『何やってるんだよ』と思いましたし、本当に申し訳なかったです」
―失点後はなかなか顔を上げられませんでしたが、そこからどう試
合を終わらせようと切り替えたのでしょうか。
「まだ時間も3、4分あって、自分がやってしまったことは変わらないので、『とにかくもうやらせない』、『負けだけはなんとしても避けないといけない』と思っていました。シュートも2、3回きた中で、(好セーブを見せ)最悪の事態は免れることができたと思います」
―翌節の湘南戦(0△0)でクリーンシートを果たしたことを含め、
精神的な強さを感じました。
「ホッとした気持ちが本当に大きかったですね。試合(を迎え
る)まではめちゃめちゃ難しくて、あえて強気にいったほうがいいのか、自分の弱さをオープンにして過ごしたほうがいいのかすごく悩みましたが、チームメートがいじってくれて、いつもどおりのプレーをして、もう一度信頼を作り直そうと気持ちの整理ができました。スタッフやサポーターの方にもたくさん声をかけてもらったので、それにすごく救われました。試合に勝つことはできませんでしたが、無失点で終わることが自分の目標でもあったので、そこをクリアにできて、うまく乗り越えられたとは思っています」
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