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[書評]読むサッカーvol.42 『J2&J3 フットボール漫遊記』
「おいでよJ2(J3にも)!」地域に根差した18の物語
おらが町のクラブ――。この表現は、J1よりもJ2やJ3のクラブのほうがしっくりくるのではないだろうか。J1のような華やかさはなく、毎年のように選手がゴッソリと入れ替わるクラブも多い。しかしそのぶん、選手、チームだけでなく、クラブそのものを応援する空気はJ1よりも濃度が上。それは、日々の取材の中でもよく感じることだ。
本書はスポーツ総合サイト『スポーツナビ』で連載中の『J2・J3漫遊記』からJクラブの物語17篇が抜粋され、さらに横浜FCの章が書き下ろされている。著者は地域リーグに至るまで、フットボールの現場をつぶさに取材している宇都宮徹壱氏。クラブ一つずつが取り上げられた各章は、ある1試合の描写から始まり、選手や監督、クラブ関係者の声、あるいはサポーターなど外部の声をとおして、クラブの現在地を切り取っていく。
たとえば岡山の章は、クラブが初めてJ1昇格争いを演じた12年のストーリー。当時まだ建設中だった専用練習場が、サポーターの働きかけで実現に向かったエピソードにクラブ愛が満ちている。きっかけは、元ブルガリア代表DFイリアン・ストヤノフが子供用プールで温冷交代浴をする姿が、地元TVで放映されたこと。それを見たサポーターたちが「この状況が続けば、いまいる選手たちもチームから離れてしまう」と危機感を募らせ、3カ月で28万人分もの署名を集めることになる。まさに市民がクラブを育てた一例だ。
福島の章では、「ユナイテッド、なくなっちゃうの?」と訴える子供の涙で鈴木勇人社長が東日本大震災からの再生を決断したエピソードや、原発事故による農産物の風評被害払しょくに向けたクラブの取り組みなどにも触れられている。
各章末には付記があり、その後の歩みと比較できるのも興味深い。取材後も紆余曲折を経ているクラブが大半で、J2、J3クラブを運営する大変さをあらためて認識させられる。だが、J1より厳しく、恵まれていない環境だからこそ、クラブには一人でも多くのサポーターの力が必要であり、サポーターにとっては応援し甲斐が出てくる。
J2担当記者としても、本書の惹句に倣って声を大にしたい。「おいでよJ2(J3にも)!」。
文:川瀬太補(エルゴラッソ京都担当)著者:宇都宮 徹壱(うつのみや・てついち)
発行:7月5日/出版社:東邦出版/価格:1,500円(本体価格)/ページ:304P -
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FC東京の篠田善之監督が解任へ
FC東京の篠田善之監督が解任されることが明らかになった。今日10日にもクラブが決断する。
篠田監督は昨季途中に解任された城福浩前監督の後を継ぐ形で就任。昨季はリーグ戦12試合で8勝2分2敗の好成績を挙げ、継続して今季も指揮していた。
しかし、今季は大久保嘉人や髙萩洋次郎、林彰洋ら多くのタレントを補強したにもかかわらず、チームは低迷していた。9日に行われたJ1第25節・C大阪戦もホームで1-4の大敗を喫し、公式戦5連敗。ここまでのリーグ戦績も9勝6分10敗と負け越しとなっている。
後任はJFA・S級ライセンスを持つ安間貴義コーチら内部昇格者が確実視される。ただ、今季の残り試合を指揮する立場での就任となり、来季以降の監督人事も同時に進めることになる。今季、悲願のリーグタイトルを目指すべくスタートした篠田トーキョーは、道半ばでの終焉となる。
文:西川結城(エルゴラッソFC東京担当)