- J2リーグ 第36節 11試合開催
- J3リーグ 第25節 8試合開催
-
京都に戻ってきた頼もしき男。石櫃洋祐が復帰戦で大仕事
J1昇格プレーオフ圏を守り抜くため、京都に頼もしい男が帰ってきた。
6位の京都が20位の岐阜をホームに迎えたJ2第36節はスコアレスで後半ロスタイムを迎える。このまま引き分けで終わるかと思えた94分。8月19日に左ひざ外側半月板損傷の手術を受け、この試合が復帰戦となった石櫃洋祐が大きな仕事をした。
ペナルティーエリア付近でFKを得た京都は素早いリスタートでペナルティーエリア内に侵入。相手DFとの競り合いでルーズボールになるが、そこに飛び込んだ石櫃が瀧谷亮に倒されると、これがPKの判定。
このPKを90+6'にアンドレイが右上に決めると、その直後に終了のホイッスル。京都が1-0で劇的な勝ち点3をモノにした。
-
大宮ユースが練習試合でトップチームに勝利。プレミアEAST、Jユースカップにはずみ
16日、大宮は大宮ユースと練習試合を行った。結果は大宮ユースが2-1で勝利。“弟分”のハングリーさがトップチームを上回った格好だ。
大宮ユースの大塚真司監督(写真中央)は「相手の時間でしっかり献身的に、粘り強く戦って、もう一度自分たちの時間を取り戻すところがすごく良かったという印象」と勝因を分析し、トップチームと対戦の機会を得られることへの感謝を語った。
「渋谷監督を始め、トップのスタッフの方々は、育成の選手やチームにすごく目をかけてくれているし、こういったクラブはなかなかないと思う。本当にありがたいし、できるだけ良い選手、良い人間を育ててクラブに貢献したい」
大宮ユースには今後、3試合を残して4位につける高円宮杯U-18プレミアリーグEAST、Jユースカップで優勝を目指す戦いが待っている。「いまがピークにならないようにということで、日々トレーニングからやっている。残りのシーズンに向けてもすごく良いゲームだったと思う」と大塚監督。今回の経験を生かし、頂点に挑む。
文・写真:片村光博(エルゴラッソ大宮担当)
-
PKを外した呉屋大翔。それでも涙を見せなかった理由
「PKを外すことができるのは、PKを蹴る勇気を持った者だけだ」
非情なPKをめぐる名言を残したのはかの元イタリア代表FWロベルト・バッジオだ。
ルヴァンカップ決勝後のミックスゾーンで、そんなイタリアの天才の言葉を思い出させてくれたのは呉屋大翔だった。
「泣いていなかったのは、ちょっとなあ。もう少し新人で外せば、『すみません、すみません』と号泣するのが大体のPKの常なんですけど」と試合後の記者会見で笑いを誘った長谷川健太監督だったが、呉屋はあえて、涙を封印していたのだ。
「行けるか?」(長谷川監督)。当初予定していたキッカーがPKを蹴ることを拒んだことで、急きょ、呉屋にキッカーを打診した指揮官に対して呉屋は「行きます」と即答。その胸の内にあったのは「あのチャンスを決め切れなくて悔しくて、その思いを込めて(蹴ると)言った」。
しかし、キックはGK西川周作に阻まれ、無念の失敗に。涙を見せなかった理由を問われた呉屋は「泣きたくはなかったですね。泣いたら、泣いてしまったら、僕よりもっと悔しい人もいると思うし、それより、あの悔しさをかみ締めて次につなげたいという思いがある」と何かをこらえるように懸命に言葉を絞り出していた。
延長後半の決定機も逃し、ヒーローにはなれなかった。ただ、22歳の大卒ルーキーは間違いなく「勇気を持った者」だった。
文:下薗昌記(エル・ゴラッソG大阪担当)
-
4試合ぶり先発のFW原一樹がハットトリック。J2最下位の北九州が残留争いのライバル・讃岐を下す
J2第36節が行われ最下位の北九州はFW原一樹のハットトリックで6試合ぶりの勝利を挙げた。
J2残留を争う19位・讃岐をホームに迎えた北九州は4試合ぶりに原を先発起用。この采配が当たった。23分にMF小手川宏基のクロスを頭で決めると、57分にはパス交換からペナルティーエリア内に侵入し、左足を一閃。76分には小手川の落としにゴール前で反応し、ハットトリック。チームを3-0の勝利に導いた。
-
横浜FMがファン感謝デー開催。千両役者・中澤はお笑い芸人エクスプロージョンのリズムネタを披露
16日、横浜FMは『トリコロールフェスタ2016』をしんよこフットボールパークおよび日産スタジアム第1駐車場で開催した。昨年まで本社機能を兼備するマリノスタウンで実施していたイベントは、練習グラウンド移転によって場所を移しての催しとなった。
ファン感謝デー恒例の選手会ステージは、リーダー中澤を中心にルーキー選手たちが一発芸やモノマネなどのネタを披露。中澤は「毎年やっているので、やらないといけない空気だから」と苦笑いを浮かべたが、喜田拓也とともにお笑い芸人エクスプロージョンのリズムネタを披露して観衆から多くの笑いを誘うなど、千両役者ぶりは健在だ。限られた時間とスペースだったが、会場には6,894人のサポーターが詰めかけ、選手との交流に笑顔を見せていた。
文・写真:藤井雅彦(エルゴラッソ横浜FM担当)
-
[書評]読むサッカーvol.16 『まんがでみる ボトムアップ理論』
サッカー指導の枠に留まらない、人間育成の入門書
“ボトムアップ理論”という考え方をご存じだろうか?
上からの指示で下の者を動かす“トップダウン”と対比して用いられ、下からの意見や情報を吸い上げる考え方のことである。サッカーの指導法でいうなら、監督やコーチが指示を出して選手を動かすのが“トップダウン”型、選手の自主性、主体性を引き出し、皆で考えながらサッカーを創造するよう促すのが“ボトムアップ”型の指導法ということになる。互いに意見を出し合いながら物事を進め、目標設定、チーム運営から先発メンバーの決定に至るまでを選手が行い、監督は“ファシリテーター”という中立的な立場で意見に耳を傾け、議論をまとめながら、皆が納得できる方向に導く黒子役に徹する。いわば、選手が主役の指導法である。
本書はそのボトムアップ理論を取り入れた指導で広島観音高を全国屈指のサッカー強豪校に育て上げ、現在は安芸南高を指導している畑喜美夫氏による選手育成の入門書だ。
本書の最大の特徴はタイトルにもあるように“まんが”であること。指導本、育成本などは文章と図解で構成されるのが一般的だが、本書は途中で挟まれる数ページの解説とあとがき以外のすべてのページがまんがで構成されている。しかし、まんがだからと侮ることなかれ。キャッチーな絵とストーリーに補完された本書の理論解説の分かり易さは特筆すべきものだ。子供のころ、歴史上の偉人の伝記をまんがで読んだことがあるだろうか。イラストや物語に紐付けされた歴史の知識というのは、史実やできごとを羅列した社会の教科書で得た知識よりも、遥かにスムーズに頭に入ってくるものだ。
本書の主人公はサッカーのことは何も知らない女子高校生。弟が通い始めたサッカークラブの練習風景に疑問を感じた彼女が、周囲の助けを借りながらボトムアップ理論でチームの改革を行っていく過程が描かれている。物語序盤ではボトムアップ理論についての知識を持たない主人公とチームだが、彼らが成長していく姿をとおして、読者もゼロから理解を深めることができる。そして、ここで大事なのが、ボトムアップ理論を通じて、チームを強くするだけでなく、選手の自主性、主体性を伸ばし、“人間を育てる”ことができると描かれている点だ。
つまり本書はサッカーの選手育成入門書としてだけでなく、人間育成の入門書という側面も持ち合わせているのである。サッカーの指導者のみならず、そのほかのスポーツの指導者から教育関係者、部下を持つ会社員に至るまで、多種多様な人にとってのガイドブックとなる一冊である。
文:横川僚平(エルゴラッソ編集部)著者:畑 喜美夫(はた・きみお)
発行:7月27日/出版社:ザメディアジョン/価格:1,200円(本体価格)/ページ:212P
-
復帰戦に臨む川西翔太、東京V戦で「一番気をつけたい選手」はやはりあの人
9月に左ハムストリング肉離れで離脱していた川西翔太が今週チームに完全合流。約1カ月ぶりの先発復帰も予想される中、今節の東京V戦(16日)で警戒する選手に、G大阪時代のチームメート・二川孝広を挙げた。
川西の離脱期間はちょうど負傷者が相次いでいた時期。ポジションによってはバックアップが薄いまま臨んだ試合もあったが、ユーティリティーな川西の復帰でシステムや選手の組み替えで融通が利くようになるばかりでなく、試合中の細かな修正もより可能になる。
チームは3試合勝利がなく、21位・金沢との勝ち点差も3となっている。「みんなは『下を見ないこと』と言うかもしれないけど、実際、現実を見ないといけない立ち位置だとも思う。チームとしてどうポイントを取るかというのを意思統一しながらやっていかないといけない」と話し、東京V戦に関しても「まずは失点しないことだったり、奪いに行き過ぎて抜かれることが一番ダメだと思うので、チームとしてのバランスが一番大事」と山形で身に付けた守備の哲学を持って臨む。
元チームメートの二川については、「あの人はすごいうまいし、自由にはやられたくないと思うので、自分としては一番気をつけたい選手」と警戒しながらも、「あそこの出しどころを潰せれば出てこないかなと思う」と二川のラストパスを封じる決意を見せた。
文:佐藤円(エルゴラッソ山形担当)
-
大一番のC大阪戦。岡山の若き二人のアタッカーが期するもの
岡山にとっての大一番、J2第36節・C大阪戦は、二人の若いアタッカーに注目だ。
前節・松本戦で押谷祐樹が警告を受けて出場停止となり、代役を任されるのは豊川雄太か藤本佳希になるだろう。二人とも切り札としての役割を与えられてきたが、この大一番で巡ってくるチャンスに気持ちを高ぶらせている。
「途中から出たらオイシイところだけもらおうっていう想いでしかやっていない」と笑い、「先発だったらチームの規律もしっかりと頭に入れてやんないといけない」と話す豊川は、「自分の特長でもある裏を狙った動きとか、オフ・ザ・ボールの動きで相手をかわしていきたい」と意気込んでいる。
そして、藤本は「状態としてはすごくいいですね。だから楽しみっていう気持ちも大きい」と自身の状態に手ごたえを感じており、「もしスタメンのチャンスが来たら、やっと来たぞって感じですから絶対に点を取りたい」と意気込んでいる。
気持ちは十分に入っている。二人ともピッチに立てば思い切って駆け回ることは間違いないだろう。若き二人のアタッカーには、チームを勝利に導く活躍が期待される。
文:寺田弘幸(エルゴラッソ岡山担当)
-
前回の昇格を知る上原慎也が強調する、フォア・ザ・チームの精神
前回J1昇格を果たした11年シーズンの戦いを知る一人である上原慎也が、昇格争いにおける終盤戦のキーポイントを明かした。
「先発、サブに関係なく、全員がそれぞれの役割をしっかり果たしきれるかが大事」
前回昇格時の10月、国立競技場で行われたJ2第30節・横浜FC戦、1-1の同点で迎えた82分に投入され、87分にCKから劇的な決勝点を挙げてチームに勢いをもたらした上原。「今回も、チームに勢いをつける働きがしたい」と力強い。今季はベンチスタートでスーパーサブとしての起用が多く、「負けているときやタイスコアのときはパワープレー。勝っているときは前線からの守備。自分の役割は試合展開によって変わるので、アップ中もしっかりと試合の流れを見ている」と背番号14。「もちろん、スタメンで試合に出たい」と本音も隠さないが、「とにかくいまは、与えられた役割をやり切ること。僕に限らず、チーム全員がその意識を徹底できれば、必ず目標は達成できる」と、あらためてフォア・ザ・チームの精神を強調している。
文:斉藤宏則(エル・ゴラッソ札幌担当)
-
ポスト・ドウグラスか。広島のアンデルソン・ロペスが練習試合でハットトリック
15日に松江シティとの練習試合を行った広島は、アンデルソン・ロペスがハットトリックの活躍を見せて5-2で勝利を収めた。
8月末に左ハムストリングにトラブルが起き離脱していたアンデルソン・ロペスは、10月に入って全体練習に合流すると、さっそく意欲をむき出しにしてピッチを駆けている。「(加入して)もう3カ月になるのでチームにはすごく慣れてきました」と本人も話すとおり、ボールを受ける場所に迷いはなくなり、強引にでもゴールへ向かっていく持ち味をうまく出せるようになってきた。「スタッフと動画を見ながら動き方を確認していますし、ドウグラス(現・アル・アイン)の動画も参考にしたり、晃誠さん(柴﨑)の動き方をよく見て勉強しています」というように、昨季のチーム得点王のドウグラスのプレースタイルに徐々に近寄ってきた印象だ。
離脱中にチャンピオンシップ出場の可能性はなくなったこと残念だったが、「落ち込んでもしょうがないし、顔を上げて頑張っていきたい。天皇杯もまだ残っているので、そこでチャンピオンになれるように頑張りたいです」と話すアンデルソン・ロペス。今季は残り少なくなったが、その実力を示す日は間もなくやってくるに違いない。
文:寺田弘幸(エル・ゴラッソ広島担当)