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「もっと早く走っておけば」。悔しさを胸に浅野拓磨がライバルとの競争に挑む
日本代表のFW浅野拓磨が、先月の悔恨を晴らす思いでピッチに立つ。
先月のロシアW杯アジア最終予選・豪州戦で後半途中から出場した浅野は、試合終了間際に左サイドの原口元気のクロスに飛び込むも、あと一歩ボールに届かずゴールを逃してしまった。
「一つ悔やんでいる場面は、あのゴール前で届かなかったシーン。あそこはもっと早く走っておけば、届いていたと思う。そこは自分で判断して動いた結果でもあり、決してサボっていたわけではない。ただゴールの嗅覚というか、そこをもっと磨かないといけない」
10月30日のブンデスリーガ2部第11節・カールスルーエ戦で、ドイツ移籍後初ゴール。欧州で結果を出しての今回の代表合流だが、「初ゴールはあくまで味方のアシストもあって、チーム全体で取れたゴール。もっとほかの場面で自分がシュートにいけているシーンがあるけど、そこで決められないので納得がいっていない」と本人も自身に厳しい評価を下す。
代表でもレスター(イングランド)で調子を取り戻した岡崎慎司や、ひさびさの代表復帰を果たした大迫勇也(ケルン/ドイツ)と、1トップ候補のライバルが並ぶ。さらにクラブの事情で今夏のリオ五輪に出場できなかった久保裕也(ヤングボーイズ/スイス)が今回代表に招集された。同世代の存在が、浅野にさらなる刺激を与える。
「久保くんもチームで結果を出している。一人のチームメートだけど、良きライバルでもある。お互い負けないように切磋琢磨していきたい。さらに上の世代の選手も越えていかないといけない人がたくさんいる。僕ら二人でどんどん底上げをしたい」
今回は最前線だけでなく、サイドでのプレーの可能性もある浅野。「どのポジションでも準備はしています。欲を言えば、相手DFと駆け引きができるトップでやりたい」と話すスピードスター。浅野が並み居るライバルに負けじと、強い気持ちで代表戦に臨む。
文:西川結城(エルゴラッソ日本代表担当)
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本田圭佑が古巣のJ2降格について言及。楢﨑正剛への思いも語る
日本代表の本田圭佑が、かつて05年~07年まで所属した名古屋の初のJ2降格について語った。
3日に行われたJ1・2nd第17節・湘南戦で1-3の敗北を喫し、名古屋はクラブ史上初めてJ2に降格することが決まった。本田はその結果について、「残念ですよね」と語り出し、こう続けた。
「(名古屋は)実際に僕が戦っていた(チームで)、サポーターがそこにいる。(J2降格は)やはりすごく悔しくて、悲しい。今まで落ちたことないですもんね。でも、落ちること自体はそんなに悪いことではないのではないかと。一つの失敗の捉え方だと思うので、物事は。いまは落ちることが次の勢いにつながるという考え方で、自分はそういう道を歩いてきた。名古屋もそういう時期にあると考えれば、この下降気味なところから、グンと一気に以前いた場所を超えていくような曲線を描けるか。実際にJ2に落ちて、いまJ1で結果を出しているチームはそういうところが多い」
さらに、名古屋時代、そして日本代表でもともにプレーしたGK楢﨑正剛についての思いも語った。本田にとっては昨年12月にミラノで再会し、多くを語り合った心を許す先輩である。
「(楢﨑の今後については)あまり簡単には言えないですね。ナラさん(楢﨑)は年齢のことも当然意識しているでしょうし、中途半端にやるのは嫌いな人やから。引退も視野に入れているかもしれない。すべてはナラさんが決めること。僕は後輩として、どういう決断をしても、現役を続けるなら応援したいし、辞めるにしても『お疲れ様』と言いたい。契約状況がどうなっているか分からないまま言っているんですけど、いろいろな選択肢があるのではないかと思っています」
そして最後に、こう一言。
「イチ名古屋グランパスファンとして、僕もサポートしていきたいなと思います」
古巣に現実的だが愛のあるエールを送った本田。名古屋に関わる人々を、彼はいまでも見つめている。
文:西川 結城(エル・ゴラッソ日本代表担当)
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「ちょっとだけ変化をつけたい」。本田圭佑が試みる新たなアプローチとは?
日本代表の本田圭佑が、ハリルジャパンの戦い方に変化を加えていく意向を示唆した。
8日午前にイタリアから帰国し、茨城県内で行われている代表練習に合流した本田。この日は軽いメニューをこなすのみとなったが、その頭の中は今回の代表戦でのプレーに思いを馳せていた。
「今回は試したいことがいくつかある。オマーン戦(11日・親善試合)のたった1試合では全部は試せないけど、その試したいことの優先順位付けをこの数日でやりたい」
これまでのハリルジャパンでは、ミランでのプレー同様に右サイドのFWに位置してきた。攻守にスピードと体力を必要とする同ポジションは、本田の能力と完全にマッチしているとは言い難い。一方、先月行われたロシアW杯アジア最終予選・豪州戦では、代表では約4年半ぶりに1トップを務め、久しぶりに中央でプレーして1アシストも記録した。試合後、本田は「(中央のポジションは)これまで長年プレーしてきたからね。むしろサイドでは腹くくってやっている、ここ2年ぐらいは。20年近くは今日のような感覚でプレーしているから」と、中央での自分に一定の手ごたえを感じていた。
今回、サイドか中央か、どちらでプレーするかはまだ分からない。本田はこうイメージしている。
「ポジションはメンバーも含めて最後まで監督が悩んで決めると思う。普通に考えたら、右(FW)の可能性がある。自分もそのイメージを持ちながら準備はしている。
ただ、監督とはしっかり話そうと思っています。どこのポジションで出ても、チームコンセプトが変わらなければ(自分の)特長が生きることはあまりない。コンビネーションのやり方、そのときの選手の動き方、ボールの持って行きどころ、そのあたりをちょっとだけ変化をつけたいなと思っている。自分と(ポジションが)近い選手との意思疎通とか、テストマッチで意識していることを変える意味でトライしてみようかなと思います」
つまり、縦に速い攻撃を前面に出す戦い方から、ボールポゼッションの時間帯や連係で崩す場面も加えていく。そのあたりの折衝を、指揮官としていくつもりだ。
現在、ミランでは依然試合出場から遠ざかっている。10月25日に行われた第10節・ジェノア戦では先発を果たすも不発。チームも0-3で敗北を喫した。
実は、本田は先月の豪州戦の前半に痛めた足首が完治しないままプレーをし続けていた。痛みに強い本田が珍しく卒倒した豪州戦、ハーフタイムには自らヴァイッド・ハリルホジッチ監督に交代を進言したほど。指揮官にそれを拒否されプレーをし続けたが、その影響もありイタリアに戻ってからも腫れが引かずにいた。
その足首の状態については、「良くなっているけど、毎度ひねっているので職業病みたいに当たり前になっている。ようやくまた一定のところまで状態が戻ってきたので心配はない」と話した。
プレーできるコンディションまで戻ったこともあり、本田は今回の代表でチームに変化を与えようとしている。はたしてそれが試合で表現されることがあるのか、また指揮官へのアプローチは成功するのか。5日のオマーン戦、本田のプレーと日本の変化に注目が集まる。
文:西川結城(エルゴラッソ日本代表担当)
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栃木のJ3優勝・J2自動昇格を願う甲府の河本明人
J3も残り2節。栃木と大分のJ3の優勝・自動昇格争いも、J2のそれ同様に勝ち続けないといけない勝ち点3差のタフな状況だ。
それを山梨県から気にかけているのが河本明人。15年、期限付き移籍で栃木(当時J2)でプレーした河本は、「(最下位でJ3に)落として本当に申し訳ないと思っています。自分自身も本当にショックでした。(6ゴールを挙げたものの)けがで十分に貢献できなかった。もっとコンスタントにプレーできていればと思います」と、栃木がJ3に降格したことをいまでも悔やんでいる。それだけに、甲府でもJ3の速報を常に気にかけながら週末を過ごしてきた。
「栃木の試合をなかなか生中継では観ることができないのですが、選手が意地を見せているからこその首位だと思います。降格は偶然ではなく、勝てる試合を落としたからだったと思います。その情けなさや悔しさはみんな持っているはず。プレッシャーの掛かる残り2試合になるけれど、文句なしの首位昇格を祈っています。俺も来年に向けて今年の悔しさをエネルギーにして頑張ります」
最初は、「俺は落としたときの選手だから、何も言えない」と口が重たかったが、なんとか絞り出してくれた。栃木の今後を気にかけながら、河本自身の来季に向けた戦いも始まっている。
文・写真:松尾潤(エル・ゴラッソ甲府担当)
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天皇杯4回戦・G大阪戦の勝利プラン。清水・小林伸二監督はターンオーバーを決断
J2優勝の可能性も視野に入ってきた清水にとって、過密日程(リーグ戦、天皇杯合わせて15日間で5試合)が大きな悩みどころとなっている。
そこで小林伸二監督が決断したのはターンオーバーだった。8日は主力組の大半を休ませて、練習に参加したのは18人ちょうど。このメンバーが、そっくりそのまま9日の天皇杯・G大阪戦のため大阪に向かうという、まさに総力戦になる。
この事態にも指揮官は、「積極的にやれる相手なので、怖がらずにやれば良い。(開始)15分は相手が攻めてくると思うので、丁寧につながないで、裏に蹴ってゲームを崩せば、何が起こるか分からない」と勝利へのプランを持っている。
そして、さらにターンオーバーが清水にも有利に働くと説く。「リスタートの攻撃に関しては、相手も自分たちの特徴を分かっていないと思うので、それが大きなポイントになる」。
これまでリーグ戦の出場に恵まれなかった選手たちだが、G大阪を驚かせるプレーでJ1相手に一泡吹かせたい。
文・写真:田中芳樹(エルゴラッソ清水担当)
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「自分に足りないものを磨く」。それが手を抜くことを知らない37歳・平川忠亮の矜持
「トシ(高木俊幸)、下がれ。ナイス、ナイス。トシ、もうちょい右。そう、いいよ、いいよ」。前線に入った誰もが「安心する」と口をそろえる平川の指示。そんな平川忠亮の声が浦和の練習場に響きわたった。
3日のJ1最終節で年間勝点1位を勝ち取った浦和。8日からは天皇杯4回戦・川崎F戦に向けてボールを使ったトレーニングが始まった。平川は今季、ACLで先発出場1試合、ルヴァンカップで途中出場1試合したのみ。リーグ戦の出場はない。7月から9月上旬までは負傷離脱していたこともあるが、公式戦の出場機会は激減した。それでもチームの中には平川を筆頭とした“出場できない選手”をルヴァンカップ優勝やリーグの年間勝ち点1位の原動力として挙げている選手も多い。
ベンチ入りすらままならなかった37歳のベテランだが、試合に出る準備をまったく怠ることはなかった。メンバー外の選手が残って大原で行うトレーニング。そこでも平川は「残っているからこそできることと、やらなければいけないことがある。常に自分たちが出たときのイメージを持ちながら、そのために必要なこと」に全力を尽くした。
その姿勢は高木にも影響を与えた。ベンチ入りさえできない日々が続いた5月から6月。高木は腐りかけた。しかし、平川を筆頭にベテラン選手が全力でトレーニングしている姿を見て、自分を省みた。その後の高木の活躍は言うまでもないだろう。
無論、平川らも他人のためにやっていたわけではない。「自分たちが出たらこういうプレーをしたい、というイメージを持ちながら、自分に足りないものを磨くため」に全力を尽くしてきたにすぎない。リーグ戦が終わり、残すは天皇杯とチャンピオンシップ(とクラブW杯)。試合数は残り少ないが、平川はこれからも試合に出るために全力を尽くすだろう。そこに“手抜き”の発想はないはずだ。
文・写真:菊地正典(エルゴラッソ浦和担当)
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「ゴールを決めたい」。新潟の野津田岳人、リーグ戦での悔しさを天皇杯にぶつける
年間勝点で並ぶ名古屋を得失点差で上回り、辛くもJ1残留を決めた新潟は、8日から天皇杯に向けて練習を再開した。3日間のオフでリフレッシュした選手たちは、リラックスした表情で生き生きとボールを追っていた。
「早く試合に出て活躍したい」と意気込んでいるのは、契約上、J1最終節の広島戦(0●1)に出場できなかった野津田岳人。この日のミニゲームでは体を寄せて相手の攻撃をブロックし、素早い切り替えから左足でシュートを決めるなど、攻守にキレのあるプレーでアピールした。
今季、新潟で出場したリーグ戦では、2得点1アシスト。中でもJ1・2nd第5節・大宮戦(2◯1)では逆転弾となる右足のミドルシュートを決め、そこで得た勝ち点3は残留の一助となった。「それでも貢献できたのは1、2試合だけ。納得いかない」と悔しさが上回る。だからこそ、天皇杯で力になりたい気持ちは強い。
「残留争いのプレッシャーがなくなったので、ここからは自分たちのサッカーができる。上を目指して勝ちにいくだけ。自分はより攻撃的なところを見せたいし、ゴールを決めたい」
チームは天皇杯で、再び新潟らしく、アグレッシブに戦うための準備を進めている。タイトル獲得を狙う舞台で、野津田も持ち味を存分に発揮するつもりだ。
文・写真:野本桂子(エル・ゴラッソ新潟担当)
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地元・静岡に帰ったことがバレバレな平川忠亮
「平川忠亮、静岡に帰る」。帰省したことがこうも分かりやすい選手はなかなかいない。より正確に言えば、静岡に帰ったことが分かりやすいのではなく、ある変化で静岡に帰ったことが分かるのだ。
「バレましたか」と平川。続けて「すぐ見れば分かるでしょ?」と笑顔を見せた。それは、髪型。平川は知らない人に頭髪をイジられることを嫌うため、散髪は地元にある馴染みの美容室と決まっている。時にワイルドな長髪になることもあるが、それは地元に帰る時間がないとき。行きつけの美容室に行けなければ、自然とそうなるのだ。
髪が伸びたからちょっとその辺の散髪屋に、という“手抜き”の発想は平川には微塵もない。
文・写真:菊地正典(エルゴラッソ浦和担当)
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ベトナム遠征に期待をふくらませる福岡の邦本宜裕。視線はU-19代表、五輪、さらにその先へ
9日にベトナムに移動し、12日にはベトナム代表との親善試合を控えている福岡。
A代表との対戦という貴重な経験の場となるが、邦本宜裕は「(自分が)一番、ワクワクしていると思う」と今回のベトナム遠征を楽しみにしている様子だった。「せっかくA代表とやれるし、勝ちにこだわってやっていきたい」と結果に対してもどん欲だった。
すでに今季の国内での公式戦はすべて終了しているが、邦本は「来季の準備という意味でも、いまの自分に足りないものに少しずつ、取り組んでいければ」と先を見据えている。その点でも今回のベトナム遠征は邦本にとって有意義な実戦の場となりそうだ。また、U-19日本代表がアジア制覇したことについては、「特に何も思わなかった」とサバサバとした回答が返ってきた。「U-20W杯へのチャンスもあると思うけど、そこがすべてだとは思っていないので。その先に五輪もあるし、さらにその先に呼ばれる選手になれるようにやっていきたい」と視線はさらに先へと向かっていた。この世代屈指の実力者ながら現在は選外が続いているが、当の邦本に焦りはないようだ。
文・杉山文宣(エルゴラッソ福岡担当)
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5つのJクラブを渡り歩いた群馬FW常盤聡が現役引退。「感謝の気持ちでいっぱいです」
群馬はFW常盤聡が今季限りで現役を引退することを発表した。今季、群馬へ加入した常盤は、クラブと来季までの2年契約を結んでいたが、本人の申し出によって自主退団となる。8日の練習前に、常盤本人がチームメートに伝えた。関係者によると、家庭の事情という。
常盤は「今シーズンをもって引退する事を決意しました。これまで水戸ホーリーホックから始まり、ギラヴァンツ北九州、東京ヴェル ディ、ロアッソ熊本、ザスパクサツ群馬と、5つものチームに携わることができ、本当にたくさんの経験をさせていただき感謝の 気持ちでいっぱいです。そしてチームと僕を応援し続けてくれた全てのサポーターの方に感謝の気持ちを伝えさせてください。 7年という短い間でしたが、僕にとって苦しい出来事もたくさんありました。そんな時でもいつも変わらず支えになってくれたサ ポーターの皆さんがいたからこそ、ここまで続けることができました。本当にありがとうございました。サッカー界からは退くことになりますが、またどこかで会えるのを楽しみにしています。今後とも常盤聡をよろしくお願いします」とクラブを通じてコメントした。
服部浩紀監督は「本人が決断をするにあたって、いろいろな思いがあったと思う。残り2試合だが、しっかりと結果を残して、彼を気持ち良く送り出してあげたい」と語った。
常盤はFC東京U-18、東京農業大を経て10年に水戸へ加入。北九州(12年)、東京V(13、14年)、熊本(15年)でプレーし、今季、群馬へ加入した。J2通算194試合出場30得点。
文:伊藤 寿学(エル・ゴラッソ群馬担当)
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