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覚悟を持ってサウジ戦に臨む吉田麻也。「これ以上ホームで不甲斐ない試合をするわけにはいかない」
日本代表DF吉田麻也が、15日に行われるロシアW杯アジア最終予選・サウジアラビア戦での必勝を誓った。
日本代表は13日、埼玉県内で非公開練習を行い、2日後に迫った大事な一戦に向けて準備を進めた。関係者によると、この日は紅白戦などの実戦形式が行われ、映像ミーティングなどで共有してきたサウジアラビア対策を実際のピッチで試したという。
サウジアラビアの印象について、吉田はこう語る。
「相手はオランダ人監督(ファン・マルバイク監督)なので、なるべくボールを保持しようとする姿勢が見られる。ただクオリティーはそんなに高いとは思わないし、しっかりやれば能力は僕らのほうが上だと思うので、あとは自分たち次第だと思います。無駄なセットプレーをなくすなど、守備に関しては細かい点を90分をとおしてしっかりこなしていかないといけない」
ディフェンスリーダーの吉田にとって、2度目のW杯最終予選。9月、10月、11月と続いている予選シリーズを、「非常にタフは戦い」と語る。特に9月の初戦・UAE戦を落とし、さらに先月のイラク戦も2-1の辛勝と、ホームでの試合では立て続けに不安定な戦いぶりを露呈してしまっている。
「ホームでの2試合は、チームとして満足のいくパフォーマンスを見せられなかったので、これ以上ホームで不甲斐ない試合をするわけにはいかない。必ず勝って勝ち点3を取りたい」と強い覚悟を示した。
文:西川結城(エルゴラッソ日本代表担当)
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「ボールを持てば自分の特長が生きるポジション」。浅野琢磨は右サイドでも自分らしさを発揮する!!
日本代表FW浅野拓磨が、15日のロシアW杯アジア最終予選・サウジアラビア戦での先発出場にアピールした。
浅野は11日の親善試合・オマーン戦で後半途中から出場。得点はなかったが、投入直後のプレーでチーム3点目となるPKを獲得する鋭い動きを見せた。さらに右サイドのアタッカーだけでなく、終盤は2トップの一角でプレーし、チーム4点目となった小林祐希の得点の起点にもなった。
今夏よりドイツ2部・シュツットガルトに移籍。今回の代表合流前には移籍後初得点を挙げ、オマーン戦でも好調ぶりを発揮していた。
そんな浅野は、大一番のサウジアラビア戦に向けて具体的なプレーイメージを描いている。
「まずはしっかり前から守備のスイッチを入れたい。高い位置でボールを奪えたら一番良い。サウジアラビアのDFは前には強い選手がそろっている印象だけど、後ろに対して速いとか強いというイメージはない。そこは一回自分が下るフリをして前に出たりとか、駆け引きをしながら特長を出していけば、相手もイヤになってくると思います」
オマーン戦では本田圭佑が右FWで先発したが、試合後の会見でヴァイッド・ハリルホジッチ監督は本田の出来に満足できないという趣旨の発言を残していた。そんな中、今回浅野は本職の最前線だけでなく右サイドアタッカーとしても考えられ、実際に練習でも同位置に入ることもある。本人も右サイドのポジションについては、こう述べている。
「元々苦手なポジションではなかったですけど、サイドでボールを持ったときには自分の特長が生きるポジションだと思っています。代表では最初は緊張などでうまくプレーできなかったけど、少しずつ自分のプレーを出せるようになってきている。裏のスペースへの意識は常に持っているし、スペースがない場合もオマーン戦でPKを獲得した場面のように前を向いていくなど、徐々に工夫していけば良いプレーができる。真ん中のポジションだけでなく、与えられた役割の中で自分を出したいです」
浅野の爆発的なスピードでサウジアラビア守備陣を切り裂く。それが実現すれば、日本の勝利が近付く。この大事な一戦を、彼は気負うことなく迎えようとしている。
「一番大事なのは、自分の動き出しが0.1秒でも遅れないこと。パスを出してくれる選手がたくさんいるので、そこは信頼しています。まだ先発かどうかは分からないけど、自分はスタートで出る準備を常にしています」
今夏、リオ五輪で2得点を挙げた日本の新エース候補。サウジアラビアとの大一番で、浅野お決まりのジャガーポーズが炸裂する。
文:西川結城(エルゴラッソ日本代表担当)
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山形の石﨑信弘監督が今季限りで退任
山形は13日、石﨑信弘監督との来季契約を更新しないと発表した。今季の公式戦終了までは石﨑監督が引き続き指揮を執り、後任については、決まり次第あらためての発表となる。
石﨑監督は14年に山形の監督に就任。同年にJ1昇格プレーオフを勝ち抜き、J1昇格を果たすとともに、天皇杯ではチームを準優勝に導いた。しかし、昨季はJ1最下位に終わり、1年でJ2に降格すると、今季は12日のJ2第41節・山口戦でJ2残留を確定させるまで、残留争いに巻き込まれるなど、不振にあえいでいた。
石﨑監督はクラブの公式HPを通じ「山形の地域の方々に支えられ、この3年間を指導者としてのスタートのチームであるモンテディオ山形で過ごすことができました。これからもモンテディオ山形の歴史は続きます。みなさまの力でこのクラブを支え続けていただければと思います。3年間本当にありがとうございました」とコメントした。
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[書評]読むサッカーvol.20 『橋を架ける者たち ――在日サッカー選手の群像』
壁を乗り越えてきた男たちの圧倒的な質量を持った生き様
本書はアン・ヨンハ(横浜FC)、チョン・テセ(清水)、リャン・ヨンギ(仙台)ら現役のサッカー選手、そして彼らより前の世代の朝鮮学校OBたちを巡る物語だ。彼らは日本と在日、在日と本国の間に立ちふさがる壁を次々と乗り越えて生きてきた。そして、ヘイトスピーチや排外デモが存在している現実を見れば、いまもその壁は存在していることは明らかだ。マイノリティー、弱者の視点から優れたノンフィクションを発表してきた著者は言う。「組織や団体の枠を超え、彼ら(朝鮮学校の生徒とそのOB)とその仲間の生き方を描くことは、いま、日本を覆っている安直なデモナイゼーション=悪玉化の霧を晴らすことになるのではないだろうか」と。
ただ、この本を読み始めれば、そんな小難しい理屈はどうでもよくなる。特に、第1章、第2章で描かれているアン・ヨンハの物語は一人のサッカー選手、いや、一人の人間の半生として圧倒的な質量を持っている。この前半部分だけでも、読む価値が十分にある。例えば、あなたの周りに18歳の若者がいたとしよう。サッカー選手としての実力は高校の地方大会敗退レベルで、大学浪人をしながら、仲間と二人きりでボールを蹴っている。そんな少年が数年後にプロになり、さらにその数年後にはW杯でカカやドログバとしのぎを削っていると聞いて信じることができるだろうか。この夢物語を実現したのがアン・ヨンハである。そしてそれは、日本国籍を持つ者が日本の大学を受験し、Jリーグに入り、代表に選ばれることよりも、はるかに難しいことだったのだ。
10月25日に38歳を迎えたアン・ヨンハは今年の4月に前十字じん帯を断裂。一度は引退を決意したが、「逃げたらダメだ」と決意を新たにし、いまは復帰に向けてリハビリに励んでいる。著者は最後にこう記す。「ヨンハの現役生活を最後まで見届けたいと思った」。この本を読んだあとには誰もがそう思うに違いない。
文:村田亘(エルゴラッソ編集部)著者:木村 元彦(きむら・ゆきひこ)
発行:9月16日/出版社:集英社/価格:780円(本体価格)/ページ:272P